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2019/08/28

燃えるアマゾンに新たな取り組み

レオナルド・ディカプリオ氏ら、ブラジルの森林火災に、500万ドルの支援

翻弄される森林


「ああ、ブラジルの自然にとって最悪の選択だ。」去10月、ボルソナロ氏がブラジルの大統領に選ばれたとき、長い自然保護の経験を持つアメリカの友人は、2016年にトランプ氏がアメリカ大統領に選ばれたときと同じくらい嘆いた。


ブラジルの農業は大規模に行われることが多い
彼の懸念はすぐに現実になっていった。多くの開発が競争のように進み始めた。アマゾンの熱帯森林の伐採ペースが加速したと国際的に報道されている。ブラジル国立宇宙研究所(INPE)は、森林伐採は、1分ごとにサッカーコートの1.5倍の面積が失われるペースに達しているという。かけがえのない世界最大の森林が急速に失われている。




アマゾン森林火災



そして、今年。アマゾンの森林火災は破壊的な規模になっている。8月のG7でも主要な課題として議論され、2000万ドルの緊急支援が発表された。この支援に関しては、すぐにボルソナロ氏の反発があり、今後どのような展開になるのか気がかりだが。

WMO(世界気象機関)のツイート。ブラジルなどを火災による煙が覆っている


ESA(欧州宇宙局)の宇宙飛行士による森林火災の煙の写真



ディカプリオ氏とEarth AllianceとAmazon Forest Fund



民間の支援も動き出している。世界的に人気の俳優、レオナルド・ディカプリオ氏が今年立ち上げた Earth Allianceによる500万ドルの森林保護への支援Amazon Forest Fundが表明された。

このEarth Allianceは、今年7月に立ち上げられたばかりの新しい環境保全のパートナーシップだ。地球環境を守るために、俳優で環境活動家のディカプリオ氏と、Apple社創始者でiPhoneを生み出したスティーブ・ジョブズ氏の未亡人、ロリーン・ジョブズ氏、そして、生物多様性保全をミッションとし、特に絶滅危惧種の保護に取り組むNGO、グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション(GWC)の会長、ブライアン・セス氏が力を結集させた。セス氏は若い実業家で、他の二人よりも日本では知られていないかもしれないが、やはり今年5月、大学卒業生の学費ローンを全額負担すると演説して世界の注目を集めたロバート・スミス氏のビジネス・パートナーだ。

 Earth Alliance
アライアンス結成早々に直面した地球環境の危機に、ブラジルのNGOと協力して森林破壊防止を支援するという。GWCは新しい団体だが、野生生物を守りたいと情熱を持つ世界的に著名なサイエンティストや環境保全家のプロフェッショナル集団だ。国際環境NGOのWWFやCIの出身者が多く、IUCNの主要メンバーも多い。アマゾンでの自然保護、先住民支援事業に携わるグループとのネットワークは、他に例を見ない。政治家たちとは違うアプローチで、実際の成果につなげて欲しいと期待している。



今年の異常気象はブラジルだけでなく、ヨーロッパには最悪の熱波をもたらし、日本でも、九州などで異常な雨量を記録した。インドネシア、アラスカ、ポルトガル、他にも多くの地域で森林火災が頻発している。人の暮らしも、野生生物の命や生きる場所も奪っていく森林火災。燃えている地域だけの問題ではない。Amazon Forest Fundは多くの人からの支援を呼びかけている。ディカプリオ氏らの取り組みに参加するのも地球を守るのにできることの一つかもしれない。

Amazon Forest Fund の詳細はこちらから


2019/06/29

プラスチックゴミを減らせ!

プラスチックゴミで溢れる西アフリカのビーチ。
リゾートホテルのすぐ脇だが、泳ぐ気にはなれない。

プラスチックゴミに取り組む世界


G20が大阪で開催されている。ここでもプラスチック問題が議題に挙がっている。

このところ、多くの国際会議で議題となっているプラスチックゴミ。協調して取り組んで行こうと、他の環境問題に比較して意外にすんなりと合意されているのは、取り組みやすい課題であり、目に見える効果をアピールできるからだろう。無料で配布していたストローやショッピングバッグを取りやめることは、企業にとっても、他の企業が同時に取り組む場合には、大きな壁にはならないということだろう。

ケニアの国連事務所内のカフェに
掲示されていたポスター
実は、日本はプラスチック問題への取り組みではかなり遅れをとっている。

フランスは2016年にプラスチックのカップや皿を禁止しているし、2020年1月には、使い捨てのストロー、ショッピングバッグなどが違法になる。それに先立ち、イギリスは、2015年にプラスチックバッグに税金をかけている。2018年には、EUが2021年までに使い捨てプラスチックを禁止することに合意。カナダのトルドー首相も今年6月に禁止の方向を表明したところだ。

日本では、ようやく買い物でのプラスチックバッグの有料化が見込まれているが、現在でも、買い物のたびに無料なら袋をもらう買い物客がまだまだ多い。ひどいことに、有料になる前に溜め込もうというような、プラスチックゴミ対策の趣旨を理解していない市民もいるようだ。プラスチックゴミに関する報道は増えているし、国際協調に関しても報道されているのに、市民のレベルでの地球市民としての自覚はかなり低い。



先を行く東アフリカの国々


一方、アフリカでは取り組みが進んでいる。ケニアはすでに2017年に使い捨てプラスチックを違法としている。なんと逮捕者すら出ているという厳格な取り組みだ。

リンク:ケニアのプラスチック禁止に関するガーディアンの記事


2018年夏、ナイロビの国連事務所で行われた国際ワークショップに参加して1週間ほど滞在した際には、スーパーでの買い物のたびにエコバッグを持参しなければならなかった。カフェでもプラスチックはもちろん禁止。ストローは紙製だ。ワークショップの記念品も紙製ストローだったのが印象深かった。

紙製のストロー
最初は、UNEP(国連環境計画)の本部があるナイロビならではなのかと思ったが、どうやら国全体で広く認識と取り組みが行き渡っているようだ。それだけプラスチック汚染が深刻なことも一因だろうが、罰金や拘束などの厳しい処置も効果を上げているのかもしれない。もともとプラスチック製品産業がそれほど大きくなかったことも立法・施行しやすかった理由の一つだろう。

タンザニアも後に続いた。違反者は罰金を科せられる。東アフリカでは、自然を求めて訪れる観光客がもたらす収入の割合が大きいので、プラスチックゴミの削減は国のイメージと収入確保に貢献するだろう。

実は、もっと早く取り組みを始めていたのはルワンダだ。2011年に訪れたときには、すでにプラスチックバッグが禁止されていた。スーパーでは紙袋のみだったが、冷たいものを入れたら濡れて破れてしまい「プラスチックの袋はないの?」と聞いたら、「牢屋に入れられるよ!」と、いったい何を考えているのだ、というような表情で返事が返ってきた。貴重なマウンテンゴリラに会いに訪れる観光客にとってルワンダのクリーンなイメージは美しい思い出作りに貢献する。ルワンダの経済発展のスピードを見ると、この国の政策が周辺諸国にもたらしているインパクトに納得する。

プラスチックゴミのないハワイのビーチ。
アザラシが時々昼寝にやってきて観光客を楽しませてくれる。


プラスチックゴミの脅威は加速度的に増している。とりわけ海洋汚染は深刻だ。太平洋の真ん中には大きなゴミの集合が浮遊しているし、すでに細くなって海水に溶け出したプラスチックがもたらす被害の研究報告を読むとぞっとする。目に見えるゴミとしても処分できなくなる日も近いだろう。今まで外国に輸出していたプラスチックゴミが受け入れられなくなり日本やヨーロッパの国々に戻される可能性が高いという。