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2015/04/23

不思議の国マダガスカルについて話します。なにから始めたらよいか迷うくらいトピックがたくさん。

キーワード。
白い指に輝く赤いルビー。
アロマとコクの豊かなチョコレート。
アイスクリームに香るバニラ。
エステサロンで最近使われ始めたバオバブのオイル。 

これらからどの国を思い浮かべますか? 

マダガスカルの定番おみやげのチョコレート。包み紙に国土がデザインされています。


その国は、アフリカ大陸の東、インド洋に浮かぶマダガスカルです。 日本から遠いこの島は、わたしたちに魅力的なものをたくさん届けてくれています。

10年以上も前、マダガスカル大使館の方たちとお会いした機会に、この国の美しいルビーの話しを聞いたときには、まさか日本から遠く離れたこの国に何度も行くことになるとは思いませんでした。



マダガスカルの首都タナの建物はかわいい色使い。


 TVが伝えてくれるマダガスカルの情報は、キツネザルやカメやカメレオンなど生き物や、バオバブの並木や石灰岩の奇妙な地形など、なんども繰り返して見る自然のことばかり。ほかにもたくさんのことが、知られるのを待っています。

アンモナイトや巨鳥の卵の化石、近海で気が遠くなるような時間を生き延びてきたシーラカンス。 

日本以上にお米を食べる国。高い貧困度と人口増加率、マラリアの脅威、数年にもわたって国際社会から相手にされなかった前政権。整備の安全性への懸念からシャルルドゴール空港への乗り入れを禁止されたナショナルフラッグ。脅威を増すサイクロンと増える被害。

そして、重要な観光業。サンゴ礁がきれいな海にはヨーロッパの人が多く訪れていますが、日本の旅行会社が組み立てるツアーでは、たいてい横跳びシファカのいる南部のベレンティと西側の星の王子様バオバブ街道くらいです。ただ、最近では、日本からウナギやタコなどの海洋資源への関心が寄せられ始めています。 

日本を訪れたマダガスカルの友人は「老人が多くて驚いたよ」と。
マダガスカルでは子どもの数が多い。言い換えれば将来があるということ。


なんてたくさんの要素。近々、環境に関心のある人たちの集まるお茶会で、マダガスカルのことを話す予定なのですが、さて、いったい、どこから始めたらいいかな。

日本人観光客に人気のバオバブ街道の近くの道路事情はとても悪い。
大きく割れたアスファルト舗装に驚いたひとも多いのでは。インフラ整備は大きな課題。


2015/04/22

ベジタリアンとハラル食。命を支える他の生き物の命を考える

ハラル食


世界の不穏な情勢は続いている。そんな折、イスラム教への関心が高まっているという。一部の過激な人々の行為への反感を持ちながらも、冷静に世界の情勢を分析したい人たちは、この宗教の歴史や教えを正しく理解したいと思っているのではないだろうか。実は、世界のほぼ2割の人がイスラム教徒。そしてその数はさらに増えると予測されている。

イスラム教徒は豚肉を食べてはいけない、ということは広く知られているが、それだけではなく、イスラム教で合法とされる方法で処理された「ハラル」食のみを食べている。世界の各地でムスリムの人々が増えるのに従って、ハラル食を食べることができるレストランや、ハラル食材を買うことができるお店が増えてきた。

ムスリムの多い国に行くときは鳥を注文することが多いかも


食べることは、他の生き物の命をいただくことだ。殺生を禁止している宗教もあるが、私たちが命を終えるまで、他の一切の命を奪わないということは不可能である。生命を構成する物質は一カ所にとどまっていない。「動的平衡」で福岡先生が書いているように、私たちの細胞は常に入れ替わっているのだ。身体を維持するためには、外部から食べ物を取り入れ細胞を入れ替えることは避けて通れない。

ただ、命を奪われる側の命を奪われる瞬間のことを想像すると、生き物、特に動物を食べることが辛くなる。生きたまま調理をするものとか、生きたまま食べる料理法とかは、わたしには残酷に見えてしまう。とりわけ日本では、生き作りなどのような料理があって閉口する。

ベジタリアンになることも考えた。野菜は好きだし、野菜だけの食事でも大丈夫。機内食でベジタリアンメニューを選んだりもする。でも、栄養のことや、動物食品(肉、魚、卵、牛乳など)の味が好きということもあり、肉と魚を食べることをきっぱりと止めることは難しかった。

肉を食べたときに、ふと考えた。宗教的な作法に則って作られるハラル食は、命に敬意を払う食べ方なのではないかと。何でも際限なく食べて、たくさん残してしまう人々が多く住む国で、ハラルのような方法を取り入れることができないものだろうか。


ハラル作法に則って準備された食材。


ニワトリを食べる


かなり前のこと。東南アジアのある町に長く滞在した。ここには大学が多く、学生の街としても知られている。下宿の近くの食堂が安くて美味しくて、すっかり常連に。学生たちとも仲良くなった。ある休日、近くの遺跡を見に行くことにした。友人たちに「自分だけで路線バスで行く」と話すと、心配したかれらのひとりが一緒に行ってくれることになった。

世界遺産の大きな遺跡をまず訪れ、さらに、農村の村に点在するさまざまな中小規模の遺跡をレンタサイクルで回ることに。あたりには田や畑が広がり、ときどきアヒルの群れやウシの隊列、頭にかごをのせて小さい子どもの手をひいた女性たちとすれ違う。

自転車で農道を走っているとき、ついさっきまで青かった空がにわかに暗くなってきた。大粒の雨が乾いた道路をすぐにぬかるみにしていく。大きなリンガを祀った遺跡についたときには、土砂降り。遺跡の脇の大きな木の下で二人で雨宿りをした。

遺跡の前の小さな農家の前庭では子どもたちが遊んでいる。やがて、お母さんと思われる女性が大きな盥の前の木材で作業の準備を始めた。そこに足を一緒にロープでつながれた15羽くらいのニワトリが運ばれてきた。

女性は、手刀でニワトリののどをスパッと。赤い血が盥の中に流れていく。ニワトリはロープにつながれているので逃げられず、ばたばたと羽を動かし、やがて動きが鈍くなった。女性は手際よく順番にニワトリののどを切っていく。お互いにつながれているニワトリは、隣のニワトリが切られるのを感じていたはずだ。

「うわ・・」とわたしが目を逸らしたのを見て、彼は「Amyは見る勇気がないんだ」と言う。 「殺されるのを見るのは好きではないよ。」 「でも、料理されたら食べるだろ?」 確かに。フライドチキンになっていたら、飛びついてしまう。

このとき、食べることは、命をいただくことだと心底感じたのだ。それ以来、食事をするたびに、そこにある食材の命のことを考えるようになった。人の食材にされなかったら、その個体は生き延びて、もっと子孫を残せていたかもしれない。

その後、わたしは自然保護の仕事をするようになり、食材がどこからどのように運ばれてくるのかを明らかにすることの大切さを実感している。

飽食事情や食糧の廃棄のことを聞くたびに悲しくなってしまう。命をいただいていることへの感謝を忘れないために、ハラル食のように食材が処理されていれば、少しだけほっとして食べられるのに、と思うのである。


2015/04/14

スマトラ島ウェイ・カンバス国立公園で考えるエコツーリズム③ 不思議なサル、スローロリス

ウェイ・カンバス国立公園の周辺には、スローロリスという不思議な生き物がすんでいます。スローロリスは、樹液や花の蜜や果実を食べる夜行性の小型霊長類です。

スマトラ島南部にすむ野生のスローロリス©Russ Mittermeier


スローロリスを探してナイトウォーク


エコロッジで紹介していただいた専門のガイドの方について、ナイトウォークに出かけました。辺りは国立公園からほど近い小さな農村で、キャッサバなどの畑や、小さな林が点在しています。

スローロリスは木の上にいるので、上を見ながら歩きます。でも。ずっと上を見上げて歩いていたら、首が痛くなってきました。そのとき、「あっ!」と声が。ガイドの方がライトを照らす先、高い木の葉の間に、黒い小さなシルエット。二つの目がライトを反射しています。体長はだいたい30センチくらいでしょうか。背中に黒い帯の模様があります。

スローロリスの背中。黒っぽいラインが特長。©Russ Mittermeier

かれらは、スローロリスというその名に似合わず、動きが素早いようです。あまり長い時間ライトを当てるとかれらの目への負担が大きいので、すぐにライトを外すのですが、ちょっと目を離すと見失ってしまいます。

「こっち!」とガイドさんの声。今度は電線の上を走っています。小さくてふわふわした体つきがまるでぬいぐるみのようです。


スローロリスの危機


実は、その可愛さが問題なのです。スローロリス(この種はスンダロリス)は、インドネシア国内でも、ほかの国でも、ペットとして人気が高く、これまでにたくさんのスローロリスが捕まってしまいました。

スローロリスは夜行性なのですが、ペットのスローロリスは、昼間も人間にかまわれて眠ることができず、すぐに弱って死んでしまうと言います。

IUCNのレッドリストで絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約でも保護されましたが、特に2000年以降は数が減る一方でした。レッドリストでもっとも危険度が高い(EN)にリストされ、2007年にはワシントン条約でもより厳格な付属書Ⅰに掲載され、国際取引が禁じられています。

スローロリス(Sunda loris)の生息地

スローロリスの生息地であるスマトラやマレー半島では、
アブラヤシ栽培などのため生息地が急減しています。
http://www.iucnredlist.org/details/summary/39759/0

スローロリスの数は、いまも減り続けています。一番の脅威はペット取引目的の違法狩猟。そして、生息地の破壊。スマトラの低地熱帯林は、猛烈な勢いで減少しています。


スローロリスを守る可能性-「迷信」とエコツーリズム


わたしたちが歩いた村では、たくさんのスローロリスを見ることができました。そんなに人目につきやすいなら、捕まりやすいのではないかとも思われるのですが、この村にはスローロリスを守る「迷信」がありました。

「スローロリスに触ると、家族に災いが起きる」というのです。そのため、彼らはスローロリスを見るだけ。見てカワイイと思うそうですが、決して捕まえようとは思わないそうです。

さらに、彼らは、ガイドが観光客を連れてくることを知っています。エコツアーから地元にベネフィットが落ちれば、観光資源であるスローロリスを守ろうとする動機付けが強くなります。外からやってくる違法なペット業者は、村人に見つかり追い出されるでしょう。

スマトラ南部の名産のひとつはドリアン!
大好きな人と絶対食べられない人にわかれます。。

エコツーリズムとかれらの「迷信」を組み合わせたら、保全のための一つの手段になるかもしれません。調査と保全手法デザインとその普及を組み合わせたプロジェクトを企画し、この近くのほかの地域に広げられないかと考えています。


スローロリスを探して歩いていたら、ヨタカにも出会えました。

2015/04/06

ネアンデルタール人絶滅の秘密ー人類の目とイヌが?!

WSJの週末版のBooks欄に興味深い記事がありました。Pat Shipman氏の書いた「The Slippery Slope to Extinction. “The Invaders” (仮訳題「侵略者−絶滅への滑りやすい坂道」)」をToby Lester氏が紹介しています。Shipman氏は、4万年前にネアンデルタール人が絶滅したのは、現代人が犬を飼いならしたためだというのです。

マダガスカルの国立公園で寝転ぶ野良犬。
現代も野良犬によって保護区にすむ生き物が脅威にさらされることがあります。


ネアンデルタール人の骨がドイツの鉱山で見つかったのは、1856年。それから7年後の1863年に、解剖学者のスカフハンセンが、この骨が何万年も前のもので現代人とは異なるものであることを明らかにします。ちょうどダーウィンが種の起原を発表して4年後。ネアンデルタール人が人類と類人猿をつなぐ「ミッシング・リンク」ではないかと期待されました。いまでもこの説が本当だと思っている人もいるようですが、実はそうでないことがわかっています。

当時思われていたよりも、ネアンデルタール人が高い知能を持っていたこともわかっています。墓を作り、装飾品で身を飾り、演説し、ボートを作って5万年前まで地中海を航海していたのです。さらに、肉や野菜を料理し、楽器を演奏していたと思われます。

DNAの研究から、30〜40万年前にアフリカに登場したわたしたちの祖先とネアンデルタール人が違うことも明らかになっています。彼らは、現代人よりも大きな脳を持ち、優れた視覚をもっていたのです。ところが、4万年前まで人類と同時期にユーラシア大陸に暮らし、気候変動にも生き抜いてきた彼らは、急激に減少し、絶滅してしまったのです。いったい何が原因だったのか。多くの科学者が議論を続けてきました。

その理由を、著者Shipman氏は「外来種」の研究から導きました。人類のせいで絶滅した多くの種の大量絶滅(Catastrophic Extinction)。エコシステムにおいて、重要な役割を果たしている最上位捕食者が激減すると、既にいる捕食者が取り除かれたり、新たな捕食者が加わったりして、trophic cascade(高次捕食者から、その餌生物、さらにその餌となる植物へと影響が波及する減少)が起こるのです。よく知られている事例は、100年前、アメリカのイエローストーンで家畜を殺すオオカミの一掃によるものです。最上位捕食者のオオカミがいなくなることによって、エルクが増え、エルクが木の皮を食べすぎて森の環境が変わり、鳥やビーバーたちの食糧が変化します。それに寄って、鳥に寄って運ばれる種が減ってしまい、春に咲く花も減り、グリズリーベアーの食べる果実も減ってしまいました。

ヨーロッパでも現代人類の登場後にこのようなことが起こったとShipman氏は考えます。まずネアンデルタール人、そして、ケーブベア、ドール、マンモス、ウーリーサイ、ホラアナハイエナ、lesser scimitar catsなどです。これらの絶滅は、犬が人を助けることにより起こったというのです。

最初にオオカミを飼いならして犬にする変化が始まったのは、18000−14000年前と言われています。ヒトが犬を使うことで洞窟に隠れるネアンデルタール人が見つかり、追われて行きました。気候変動や人類がもたらした病気に犬が追い討ちをかけて、ネアンデルタール人が絶滅したのではないかというのがShipman氏の考えです。

では、なぜヒトは犬を飼いならすことに成功したのでしょう。

そのカギは、ヒトの目。ヒトだけが霊長類のなかで白目をコントロールできます。白目は遠くから見ることができ、イヌとのアイコンタクトに活躍します。ネアンデルタール人が、いま私たちが知る他の霊長類のように暗い色の白目を持っていたとしたら、現代人が圧倒的に有利です。類人猿やオオカミを含むほとんどのホ乳類は、人類のようにアイコンタクトを行いません。視線を追うのに長けているイヌはヒトの目の動きをおいました。そして、イヌは人類の最初の生きた道具になったのです。

むむ。面白そうではないですか。さっそくこの本を注文しようと思います。