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2020/05/25

モロッコ旅行記① バーバリマカク


(ブログ当初の「ですます調」から、一旦「である調」に変更したのですが、また「ですます調」に戻ってしまいました。混在御容赦を。。)


アフリカ大陸の北西側に位置するモロッコ王国。地中海を挟んですぐ向こうはヨーロッパ。地中海と大西洋と砂漠と山脈に囲まれ、多様な自然を持つ国です。面積は日本の1.2倍で、農業、水産業、観光業が主要産業。日本では、タコやオリーブ、最近ではアルガンオイルの産地国として知る人も多いでしょう。

7世紀にはアラブの文化がモロッコに到達し、タイルやモスク、市場など魅力ある文化が作られてきました。立憲君主制のこの国には、アラブ人とベルベル人が暮らしています。




中央アトラス山脈のバーバリーマカク


北西アフリカのアトラス山脈は、モロッコ、アルジェリア、チュニジアにまたがる大きな山脈で、モロッコには最高で4000メートル以上のトゥブカル山があり、世界の登山家にも人気です。ヒマラヤスギや樫などが生育し、冬は雪に覆われます。

中央アトラス山脈。裾野では放牧が行なわれています。

バーバリーマカク


バーバリーマカクは、現在、モロッコとアルジェリアに生息しています。モロッコでは、裾野から標高2600メートルくらいまでの森や岩山に生息しています。ニホンザルに似ているサルです。ちなみにニホンザルは、英語でジャパニーズマカクと言います。ニホンザルはスノーモンキー(雪ザル)という呼称があり、雪の中で温泉に入る様子が人気ですが、バーバリーマカクも、冬には雪の中で活動します。

中央アトラス山脈の森の果実や木の葉を食べていますが、農業の拡大や森林の縮小などで、個体数は減り続けているそうです。最近行われた調査(2004)では、過去24年間で50パーセントも減少してしまい、IUCNのレッドリストでは、絶滅危惧種(EN)に位置づけされています。

ヨーロッパのジブラルタルには導入された集団が暮らし、「ヨーロッパで唯一のサル」として知られます。また、サハラ砂漠以北のアフリカ大陸で唯一の霊長類でもあります。


イフレン国立公園



今回訪れたのは、イフレン国立公園。ヨーロッパ風の家並みと街並みで、イフレンはモロッコのスイスと呼ばれています。秋冬はヨーロッパ並みに寒いです。一方、夏には避暑地として人気です。一帯はヒマラヤスギの森林を擁し、Vettelという場所から湧き出る水が人気です。ヨーロッパにも同じ名前の水がありますが別のものです。

観光客の車を覗き込むマカク。日本の観光サルのよう。。。

メス。性器が発達しています
あちこちで交尾するバーバリーマカク

イフレン国立公園は最もたくさんのバーバリーマカクが生息している場所です。駐車場には、バーバリーマカクが集団で登場します。かなり近くで観察することもできますし、サルから寄ってくることもあるので、メガネなどを取られないように注意を。

イフレンには、200種以上の鳥も生息しています。

美しいマツボックリ

イフラネ近郊。放牧が行われています

秋の黄葉がヨーロッパの雰囲気。見事なプラタナスの並木もあります


ヒマラヤスギの上で人間観察



2020/05/20

コンゴ民主共和国のマウンテンゴリラとレンジャーを救え!

レオナルド・ディカプリオ氏の環境保護支援に参加を!
マウンテンゴリラとレンジャーを救うための世界のミッション「ヴィルンガ基金」


新型コロナウイルス対策支援を開始したディカプリオ(Leonardo DiCaprio)氏たち、自然保護にもさらなる貢献


戦地・ヴィルンガ国立公園


「自然保護は戦争だ」ということをありのまま描いた衝撃的な自然保護ドギュメンタリー「VIRUNGA」(2014)がアカデミー賞候補にノミネートされたのは2015年のことでした。あれから5年。マウンテンゴリラの聖域ヴィルンガ(Virunga)は、何度も武装勢力に襲われ、多くのレンジャーや関係者を失いながらも、希少なマウンテンゴリラにどうしても会いたいと熱望する世界からの訪問者を受け入れてきました。




困難な状況下で、文字通り命がけでレンジャー達を指揮する公園長のエマニュエル氏は、人命やゴリラを失うたびに打ちのめされながらも、常に前を向いて、絶滅危惧種マウンテンゴリラの保護に力を注ぎ様々な場所で、世界の人々やリーダーたちに支援を訴え続けてきました。

ところが、いま、3つの極めてショッキングで大きな問題が立ちはだかっています。

武装勢力、新型コロナウイルス、エボラ出血熱に立ち向かうヴィルンガ国立公園


2020年3月はじめ、エマニュエル氏に届いたのは、エボラ出血熱が再流行を始めたらしいという知らせでした。エボラ出血熱は致死性の高い伝染病で、地元コミュニティに大きな負の影響をもたらし、世界からの旅行者を減らします。翌日、レンジャーが一人武装勢力に撃たれなくなったという知らせが入りました。

さらに、世界規模で、新型コロナウイルスが大流行を始めたのです。すでに昨年末から中国での大規模な流行があり死者が出ていましたが、今年の2月までは、それ以外の地域の人々はそれほど深刻に捉えていなかったように思います。ところが、3月に入ると、突然、カリフォルニア、ついでニューヨーク、大西洋の反対側のヨーロッパ、と、感染者が日を追うごとに激増し、重病者と死者数も見る間に信じられない数に。短期間のうちに、ほぼ世界のいたるとこで人々の命と健康が危険にさらされ、ツーリズムは打ちのめされました。4月に入ってもこのCOVID-19は猛威を振るっています。

ウイルスが国立公園周辺に入れば、高度で十分な医療体制のないアフリカのリモートエリアでは、致命的な被害がもたらされるでしょう。

また、ゴリラなど霊長類に感染する危険もあります。当面の間、訪問者がもたらす収入で国立公園を運営し、ゴリラと自然を守ることができなくなってしまいました。

その最中、酷く痛ましい来事が起きました。

4月24日、朝11時。公園事務所へ帰る途中だったレンジャーたちを武装勢力が攻撃しました。12人のレンジャーとドライバーの13人が殺されたのです。20代と30代のレンジャー。彼らの家族や友人、仕事仲間、そして世界の保全関係者の悲しみの大きさは言い尽くせません。


「ヴィルンガ基金」レオナルド・ディカプリオ氏、EU、エマーソンが支援を開始




ヴィルンガ基金への支援はこちらから。
https://www.globalwildlife.org/virunga-fund/

アマゾン森林火災にもいち早く支援を打ち出したディカプリオ氏、アース・アライアンスの一員であるEmerson Collective(故スティーブ・ジョブズ夫人、ロレーン・ジョブズ氏の財団)、ヨーロッパ委員会(EU)、が協力し、200万ドルをまずシード基金(最初の元になる資金)として支援します。EUもEmerson Collectiveも、COVID-19対応に多くの資金を支援し、応援している中での、迅速な取り組みの決定です。あまりにも多くのレンジャーを失ったヴィルンガ国立公園の運営、家族を失い困窮に直面しているなくなったレンジャーの家族の支援、病気の伝染防止など、地域での必須の活動に役立てられます。

私たちも、自分で可能な範囲の金額の支援で参加できます。資金はすべてヴィルンガ国立公園保全のために使われます。


地元スタッフ養成の重要性


現在、私たちが直面しているようなパンデミックの状況下では、国際的な支援を国際スタッフが現地に届けることは大変困難です。現地でのオペレーション、資金の運用、報告など、あらゆる面において、地元のスタッフ、研究者の育成がますます重要になってきます。将来的に保全のキャパシティやオーナーシップを強化するためにも、ローカル・スタッフの育成と国際社会との連携をどのように構築していくかは、コロナ大流行下で強調されてきた課題といえるでしょう。

そして、すぐに対応出来る柔軟で迅速な体制が必須。新型コロナを楽観視してきちんとした情報と理解に基づいた判断ができず、対応がもたもたしている国では、被害が甚大になっています。命を守る仕事である自然保護も同じです。

日本の人々にとっても他の世界の話ではありません。コロナ禍で図らずも多くの人が理解したように、世界のどこかで起きている問題は、いつか私たちの足元にやってくるのです。以前とは比べものにならないスピードで。


GWC(Global Wildlife Conservation)のプレスリリース(英語)はこちら



2016/02/19

野生の世界はそのままに・・・。可愛すぎるスローロリス

サル年、スタートしましたね!
ところで、スローロリスというサルをご存知でしょうか?ふわふわのぬいぐるみのような小型のサルです。インドからフィリピンにかけての東南アジアに生息しています。

野生のスローロリス。スマトラ島で。©Russ Mittermeier


このスローロリス、可愛いことが仇になって、いま絶滅の危機に瀕しているのです。しかも、その危機を高めているのは、日本人だと指摘されています。

野生動物虐待ビデオに「いいね!」がつけられる日本


日本の環境団体JWCS(野生生物保全論研究会)と、イギリスのオックスフォードブルックス大学のネカリス博士のグループは、インターネットに公開されているビデオの中で、虐待ともいえる扱いで”かわいがられる”スローロリスのビデオをたくさん見つけました。多くが日本人によるものです。

例えば、夜行性のスローロリスを明るいところにさらしたり、野生では昆虫や樹液を食べるのに、人間が食べるおにぎりを食べさせたり。しかも、スローロリスの生態を知らない人たちは、単純に”かわいいっ!”と思ってしまい、ビデオに「いいね!」をつけたり、拡散したりしてしまっているのです。

さらに、そういう”かわいい”スローロリスのビデオ映像は、見た人たちに「スローロリスをペットとして飼いたい」と思わせてしまうようです。なんと、日本はスローロリスの最大の輸入国。絶滅危惧種のスローロリスは、ワシントン条約で保護されていて、現在は、特別な場合しか輸入が認められていないのに、いまも登録票が不正使用されたりして、ときには100万円もする高値をつけてペットショップで売られています。

野生動物は野生のままに


この「おにぎりスローロリスビデオ」は、世界の霊長類学者の間でも問題にされているそうです。ペットにされたスローロリスたちは、奇形を発生させたり、肥満にさせたり。でも、もともとの野生の姿を知らない飼い主は奇形や肥満だと気づかないのです。

スローロリスが絶滅の危機にあること、日本にやってくるスローロリスはほとんど違法取引によるものだということを、もっと多くの人に知ってほしいと思います。この違法取引が魅力的な生き物をさらに危機に追い込んでしまっているのですから。

JWCSの鈴木事務局長は、国際社会は違法野生生物取引を減らすように協力しています。日本も十分に責任を果たすべきです」と呼びかけています。






         




2015/12/23

来年はサル年!・・でも、世界のサルたちはいま危機に・・

2016年の足音も聞こえてきたこの頃。来年はサル年ですね。

日本に固有のサルは、ニホンザルとヤクザルです。北限のサルとして下北半島のサル、温泉ザルなどが世界的に有名なようです。

世界に300頭以下しかいないというデラクール・ラングール。ベトナムの奇岩地域で。
大人はシロクロのパンダ色で、子どもは金色。


世界の霊長類の半数以上が危機的な状況に

日本のサルの数は安定していますが、世界のサルたちの多くは、危機的な状況に直面しています。今年の11月に、IUCN(国際自然保護連合)種の保全委員会などが、700種ほどの霊長類のうち、半数以上が絶滅の危機に直面していると発表しました。

原因は、生息地の自然の破壊、食肉としての狩猟、違法なペット取引などです。とくに、小型のサルたちはペットとして人気が高く、フィリピン・メガネザルやジャワ・スローロリスは最も危機的な状況にある霊長類にリストアップされました。

ベトナムでTVを見ていたら、スローロリスなどの違法な野生生物取引を
やめるように呼びかけるTVコマーシャルが。。

可愛いことは危険なこと

これら霊長類は、現在ではワシントン条約で国際取引が禁じられているのにも関わらず、日本でもペットとして人気があります。

かれらは、もともとの食べ物ではない人間の食事を与えられたり、夜行性なのに昼間にかまわれたりしてストレスにより衰弱してしまっています。飼い主は、かわいい(と人間には思える)姿をビデオや写真にとりSNSで公開しているようですが、世界の専門家たちから多大な非難が日本人全体に向けられています。ひどい行動を即刻やめてほしいと思います。

アジアでは、富裕層が増えるとともに珍しい動物を飼いたいという人が増えているようです。また、以前から、”珍味”としてサルを食べる人々もいるからか、世界でも特に危機種のトップ25に入る種が10種と多くなっています。

シンガポールでモンキーウォッチング。

モンキー・ウォッチング

サルたちを守るために有効な手段として登場したのが、「モンキー・ウォッチング」です。珍しいサルを見て、彼らの住む生息地を見て、その周囲の人々や自然のことを知るというエコツアーは、新しい自然保護のツールとして期待されています。

モンキー・ウォッチングの推進者アンディ・アンさんのウェブサイト
http://www.primatewatching.com

2015/11/23

サボテン絶滅の危機が高まっています

ほとんど雨の降らない乾燥地で生きていけるサボテンたち。かなりタフに見えますが、実は、3割近くのサボテンの種が絶滅の危機に直面しているそうです。

サボテンは動物たちに食料と水を提供し、
動物たちはサボテンの花粉を媒介して実をつけるのを助けています。


今年10月に、サボテンの種の世界的な評価の結果が発表されました。このような世界的な総合評価が行われたのは初めてとのこと。実は、ホ乳類や鳥類よりも危機の度合いが高いことが判明したのです。

危機の原因は、生きているサボテンやタネの違法な取引によるものです。その他に、放牧や農業も脅威になっています。


サボテンは乾燥地の生き物たちの命を支えています。


サボテンは、南北アメリカ大陸の乾燥地にすむ多くの生き物にとって、食料や水分を得るために不可欠の存在なのです。野生のシカ、ウサギ、ネズミ、コヨーテ、七面鳥、トカゲ、カメなど多くの種がサボテンを頼りに生きています。また、人間が利用しているサボテンは、なんと1480種もあります。


1975年以降、ほとんどのサボテン種がワシントン条約付属書に掲載されましたが、コレクターによる違法取引の脅威は続いています。

サボテンの危機に関するIUCNの報告書

2015/05/17

スイスで自然保護と鉄道の旅

スイスには、多くの国際機関がありますが、環境保護団体のWWFの本部や、国際自然連合IUCNの本部もおかれています。スイスは、永世中立国として知られていますが、大国に囲まれたことを活かして外交に長けた国としても有名です。多くの人がフランス、ドイツ、英語などの数カ国語を流暢に話せます。世界中の人と協力する必要がある自然保護の仕事のためには、主要な言葉を話せると役に立ちます。

ジュネーブからチューリッヒへ向かう車窓からの風景。清々しい空気。


会議と打ち合わせのためにIUCN(現地では、フランス語が使われ、UICNといいます)にお邪魔しました。IUCNは、各国の政府や国際機関、NGOなど1200のメンバーからなる国際機関です。1万人を超える科学者と1000人のスタッフが自然保護のために働いています。スイスの本部は、とても静かでのどかな場所にあります。

淡水生態系保護のセミナーに飛び入り参加。

IUCN本部から近いレマン湖のほとりには、美しい町があり、観光客も多く訪れていますが、それでも、なぜか時間がのんびりと流れている感じがします。

レマン湖にいた珍しいカモ。

あちこちに水飲み場が。直接飲めるそうです。
たいてい花が飾られています。

スイスと言えば、鉄道ファン垂涎の国!美しい山や景色を見ながら移動できて、爽快でした。

レマン湖周辺にはワイン畑が広がっています。
最近スイスワインは人気なんだとか。


鉄道好きには楽しめる場所がたくさん!

地元の方にホームディナーに誘っていただきました。夕方、まだ日があるうちのアペリティフのあと、会議の参加者たちと一緒に近くの自然道で散策を楽しみました。“散策”といっても、生物の専門家ばかり。すごい双眼鏡やカメラを持ち、生き物や樹木を見つけるたびにミニ講義。鳥を見つけては鳥の学者がなんという名前でどんな生態なのかを説明してくれるし、ここにしかいないカメが池にいたと誰かが見つければ、は虫類専門家が走り出して見に行き、ずっと離れないし。いつまでも少年のような大人たちと一緒にいると、心から楽しめます。

ディナーには、いろいろな国から来ているインターンの若い方達も加わって、さまざまな情報交換が行われていました。美味しい家庭料理を作ってくれたホストに感謝。ここでは空気が澄んでいて、星空がとてもきれいでした。部屋での歓談の合間にワインを持って外に出てお庭のベンチに腰掛け、しばし星空見学。





2015/04/14

スマトラ島ウェイ・カンバス国立公園で考えるエコツーリズム③ 不思議なサル、スローロリス

ウェイ・カンバス国立公園の周辺には、スローロリスという不思議な生き物がすんでいます。スローロリスは、樹液や花の蜜や果実を食べる夜行性の小型霊長類です。

スマトラ島南部にすむ野生のスローロリス©Russ Mittermeier


スローロリスを探してナイトウォーク


エコロッジで紹介していただいた専門のガイドの方について、ナイトウォークに出かけました。辺りは国立公園からほど近い小さな農村で、キャッサバなどの畑や、小さな林が点在しています。

スローロリスは木の上にいるので、上を見ながら歩きます。でも。ずっと上を見上げて歩いていたら、首が痛くなってきました。そのとき、「あっ!」と声が。ガイドの方がライトを照らす先、高い木の葉の間に、黒い小さなシルエット。二つの目がライトを反射しています。体長はだいたい30センチくらいでしょうか。背中に黒い帯の模様があります。

スローロリスの背中。黒っぽいラインが特長。©Russ Mittermeier

かれらは、スローロリスというその名に似合わず、動きが素早いようです。あまり長い時間ライトを当てるとかれらの目への負担が大きいので、すぐにライトを外すのですが、ちょっと目を離すと見失ってしまいます。

「こっち!」とガイドさんの声。今度は電線の上を走っています。小さくてふわふわした体つきがまるでぬいぐるみのようです。


スローロリスの危機


実は、その可愛さが問題なのです。スローロリス(この種はスンダロリス)は、インドネシア国内でも、ほかの国でも、ペットとして人気が高く、これまでにたくさんのスローロリスが捕まってしまいました。

スローロリスは夜行性なのですが、ペットのスローロリスは、昼間も人間にかまわれて眠ることができず、すぐに弱って死んでしまうと言います。

IUCNのレッドリストで絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約でも保護されましたが、特に2000年以降は数が減る一方でした。レッドリストでもっとも危険度が高い(EN)にリストされ、2007年にはワシントン条約でもより厳格な付属書Ⅰに掲載され、国際取引が禁じられています。

スローロリス(Sunda loris)の生息地

スローロリスの生息地であるスマトラやマレー半島では、
アブラヤシ栽培などのため生息地が急減しています。
http://www.iucnredlist.org/details/summary/39759/0

スローロリスの数は、いまも減り続けています。一番の脅威はペット取引目的の違法狩猟。そして、生息地の破壊。スマトラの低地熱帯林は、猛烈な勢いで減少しています。


スローロリスを守る可能性-「迷信」とエコツーリズム


わたしたちが歩いた村では、たくさんのスローロリスを見ることができました。そんなに人目につきやすいなら、捕まりやすいのではないかとも思われるのですが、この村にはスローロリスを守る「迷信」がありました。

「スローロリスに触ると、家族に災いが起きる」というのです。そのため、彼らはスローロリスを見るだけ。見てカワイイと思うそうですが、決して捕まえようとは思わないそうです。

さらに、彼らは、ガイドが観光客を連れてくることを知っています。エコツアーから地元にベネフィットが落ちれば、観光資源であるスローロリスを守ろうとする動機付けが強くなります。外からやってくる違法なペット業者は、村人に見つかり追い出されるでしょう。

スマトラ南部の名産のひとつはドリアン!
大好きな人と絶対食べられない人にわかれます。。

エコツーリズムとかれらの「迷信」を組み合わせたら、保全のための一つの手段になるかもしれません。調査と保全手法デザインとその普及を組み合わせたプロジェクトを企画し、この近くのほかの地域に広げられないかと考えています。


スローロリスを探して歩いていたら、ヨタカにも出会えました。

2015/03/19

スマトラ島南端のウェイ・カンバス国立公園で考えるエコツーリズム①

スマトラ島南部のウェイ・カンバス国立公園(Way Kambas National Park)。ここには、急激に減少するスマトラ低地林にわずかに残された貴重な森が守られています。

ボートで川をすすむ。両岸にサルや鳥たちが次々に現れる。


さまざまな生き物たちがすむ森


シアマン(フクロテナガザル)が軽快に枝を移動して行きます。

シアマンとも呼ばれるフクロテナガザルを探して朝の散歩。
黒い体毛で、その名の通り、手が長い。高い木の上を大胆に移動して行きます。

シアマンを探して上ばかり見ていると、地上の貴重な生き物を見逃すことも。マメジカというとても小さなシカが小径を横切って行きました。その途端、「あっ!」上空を横切る風呂敷のような影。ヒヨケザルが樹幹を滑空したのです。

ジャカルタから飛行機で1時間もかからないバンダール・ランプン空港から、車で数時間の移動。首都へのアクセスのよさは、自然への脅威ももたらしやすく、この周辺のスマトラの低地森林は、この数十年で急激に減少し、間もなくすべての森がなくなるのではないかと懸念されています。紙製品を作るため、さらにアブラヤシのプランテーションを作るために、次々に森林が伐採されてしまったことが最大の原因といわれています。また、この地域は倒木や枯れた草などが長年かけて積上ってできた泥炭湿地なので、一旦火災が起こると泥炭層が燃え、なかなか消えずに森を焼き続けます。

そんなスマトラ南部に残る、このウェイカンバス国立公園とブキットバリサン・スラタン国立公園は、スマトラの野生生物たちにとっても貴重な生息地で、スマトラトラ、スマトラゾウ、バク、ドール(アカオオカミ)を始め、絶滅が心配される希少な生き物たちがすんでいます。

次回、ウェイカンバス国立公園で出会った生き物たちについてご紹介します。



2015/02/23

惜しくもアカデミー賞を逃したVIRUNGA。でも、多くの人に自然保護の現実を知らせてくれるはず。

昨日アカデミー賞の発表がありましたが、残念ながらVIRUNGAはオスカーを逃してしまいました。でも、素晴らしいドキュメンタリー映画であることには変わりません。日本でもぜひ上映してほしいです。多くの人に見て、現場を知ってほしい。

国立公園の森の地下に資源が眠っていることはまれではありません。その資源へ向けられる視線は熱く、とくに政治的に安定していない国や貧困の度合いが高く公平度の低い国では、自然保護に関わる人たちの危険の度合いが高くなります。

わたし自身はそんなに緊迫した状況におかれたことはありません。でも、レンジャーの方たちや実際にいろいろ深刻な自然保護の困難を経験してきた人たちの話しを聞く貴重な機会を得てきました。知ることはすべての第一歩です。そこから何ができるのかを一緒に考えることができるはずです。



2015/02/22

第87回アカデミー賞発表間近!自然保護ドキュメンタリー映画Virungaがオスカー2015にノミネート

今年も世界の映画好きが心ときめかす季節がやってきました。第87回アカデミー賞の発表は、2月22日です。

わたしの大好きなThe Grand Budapest Hotelも作品賞などにノミネートされていて、どうなるかワクワクしながら発表を待っています。

アカデミー賞ドキュメンタリー部門にノミネートされたVirunga
Image from virungamovie.com

ドキュメンタリー部門には、「Virunga」がノミネートされています。



コンゴ東部の世界遺産、ヴィルンガ(Virunga)国立公園は、希少なマウンテンゴリラの生息地です。すべてのマウンテンゴリラの三分の一がここにすみ、また、東ローランドゴリラ(eastern lowland Grauer’s gorillas)やチンパンジーもいます。つまり、ヴィルンガは、三種の大型類人猿がくらす世界で唯一の場所ということ。美しい自然と優美でたくましい生き物。実はこの地球の遺産を守るのは、命がけです。

この映画では、自然保護の重要性と過酷な現実が強烈に描かれています。銃や国連治安維持部隊、戦士。きめ細かく作り込まれた映画のシーンのように見える光景は、現実なのです。

社会問題に目を向け続けてきた若い監督Orlando von Einsiedel と、 映像の力で社会や人権などの問題について社会に問いかけてきた女性プロデューサーJoanna Natasegaraの作品。レオナルド・ディカプリオがエグゼクティブ・プロデューサーとして参加しています。



シドニーWPCの議論にリモートで参加する
ヴィルンガ公園長エマニエル氏。
内戦、密猟者、自然公園の地下に眠る石油と鉱物資源。人の欲望と争いのため、ヴィルンガ国立公園のパークレンジャーは非常な危険にさらされています。この20年間で130人ものレンジャーが密猟者の襲撃によって亡くなっているのです。公園長のエマニエルさん(ベルギー王子)も、二度も狙撃され命の危険にさらされました。

The Telegramの記事:
Battle for Virunga: The fight to save Africa's oldest national park

エマニエル氏や英ウィリアム王子が参加した「United for Wild Life」の記者会見に関するブログ


「Conservation is War (自然保護は戦争だ)」というショッキングな言葉も、映画Virungaをみるとその通りであることが実感できるはず。これは、ヴィルンガ国立公園だけでなく、世界の多くの場所で当てはまる言葉なのです。




Virungaが今回のオスカーにノミネートされたことで、自然保護の現場の直面する深刻な問題、レンジャーたちの偉大な仕事、自然の貴重さと素晴らしさなどを多くの人が知る機会になるのではないかと思います。

WPCではレンジャーたちが表彰されました。




2015/02/16

フロリダ自然保護区を自転車散歩。希少なアナホリゴファーガメたち

アナホリゴファーガメ(Gopher Tortoise)は、その名のとおり、大きく深い穴を掘るカメで、温暖なフロリダを中心にアメリカ南東部に生息しています。

アナホリゴファーガメ。仲間を探しているのかな。

フロリダのとある鳥獣保護区を自転車で散策して、たくさんのアナホリゴファーガメを見つけました。道の両脇にはカメが丈夫な脚で掘った穴があり、ときどきそれらの穴からカメが歩き出してくるのです。

花やフルーツ、草などを食べるこのアナホリゴファーガメは、絶滅の危機にあり、フロリダ州の個体数は80万頭以下に減少しているとみられています。ワシントン条約の付属書Ⅱにも掲載されています。危機の最大の原因は住宅地や商業地の開発に寄る生息地の減少で、交通事故、病気なども影響しています。


毒ヘビもお散歩中。

道の脇の小川のなかには、ワニの子どもがプカプカ。

フロリダの住宅地には、野生の鳥たちがやってきます。


2015/02/08

アラビア紀行② 豊かな海の生態系と希少な生き物を守る取り組み

アラブ首長国連邦には、7つの首長国があります。首都のおかれているアブダビ、ドバイ、シャルジャ、ラス・アル・ハイマ、フジャイラ、アジュマン、ウンム・アル・カイワインの7つの首長国から構成されています。

ドバイ空港からアブダビへ。高速道路の両側には高層ビルが建ち並ぶ。

まず、ドバイの空港から高速道路を通りアブダビへ。真新しい高層ビルが道の両側に建ち並ぶ光景に圧倒されました。お迎えは超高級なトヨタ車。車種は忘れてしまいました。窓の内側には強烈な日差しを遮るシェードが付いているのがなんともご当地流。快適な移動でしたが、車外の気温はなんと摂氏48度。


砂漠の国に豊かな海が

アラブ首長国連邦の国土の大部分は砂漠ですが、沿岸には豊かな海洋生態系が存在します。サンゴ、ウミガメ、イルカ、ジュゴンなどが生息しています。

マングローブの森もあります。アブダビでは、40年ほど前に日本の石油会社の支援でマングローブの植林が行われ、現在は、とても大きな森になっています。ここでは、サギやフラミンゴなどの鳥や、カニなどの小動物を見ることができます。カヌーやフローティングボードで遊ぶ人もやってきます。

マングローブ林は、小動物や鳥たち、そして人々の憩いの場になっている。

違法野生生物取引が増加

貿易や観光で発展するドバイでは、取り扱う物流の量も飛躍的に伸び続けています。ドバイは、アフリカ、アジア、ヨーロッパの貿易中継地として地理的にも優れていますが、空港や港湾での野生生物の違法取引の摘発も増えているそうです。今回は、摘発された後の動物たちを保護しているシャルジャの施設を訪問しました。マダガスカルのリクガメやアフリカのヘビやトカゲ、アラビア半島のさまざまな生き物が狙われています。アブダビの環境庁は、CITES(ワシントン条約)との連携を強化しているそうです。

ペットとして違法に海外に持ち出されそうになったアラビアン・レパード。

カタールの王族が希少な生き物を保護

アラブ首長国連邦に続いて、カタールを訪問しました。野生生物保護に強い関心を持つカタールの王族が保護施設を設立したのです。もともとは王族の個人的なコレクションだった希少な生き物たちは、現在、世界の各国から集められた専門家によって飼育されています。ここは、砂漠の真ん中ですが、地下には豊かな地下水があり、汲み上げられた水は、地上で動物たちを癒す緑を潤しています。

動物飼育保護施設は、砂漠に囲まれている。

下の写真の青いインコ(Spix's macaw)は、もとの生息地である北西ブラジルのカチンガでは、ペット需要のために捕獲されすぎた結果、絶滅してしまったのです。最後の野生の個体が目撃されたのは2000年でした。ところが、ある個人のコレクションとして数羽が生存していることがわかり、この施設にやってきました。この施設は、このインコの野生への復帰を目指して、飼育と繁殖の取り組みを続けており、現在では65羽に増えています。この努力に加えて、カタールの王族は、もとの生息地であるブラジルにインコを戻すために、土地を入手して生息環境回復の取り組みを続けてきました。

ところが、とても残念なことに、昨年秋にこの王族が急逝してしまいました。これまでの取り組みに心から敬意を表します。今後の保全プロジェクトの行方が気がかりです。


ブラジルで野生絶滅したインコ(Spix's macaw)。

2015/01/25

アラビア紀行① 中東からの自然環境保全は、決定力と資金力!

ここ数年、中東のプレゼンスの高まりを実感します。まずビジネスに関しては、中東パワーは重要な要素。エミレーツ航空やカタール航空などの日本への就航やその運行実績への高評価、日本企業による投資やドバイの高層タワーや高級住宅なども注目され、いままで日本からは遥か遠くに思われていた国々が、急速に身近になってきたようです。 

ドバイの水族館。アラビアの服装の少年たちも。


自然環境保護の多くの場面でも、中東からの資金支援やイニシアチブに触れる機会が断然増えています。わたしが中東に注目した最初のきっかけは、2008年のWCC(World Conservation Congress、世界自然保護会議)でした。バルセロナで開催されたこの会議で、アブダビの皇太子モハメド・ビン・ザイド王子が、アブダビ政府による種の保護のための150億ドルの資金支援を発表したのです。

絶滅危惧種の保護を支援するモハメド・ビン・ザイド財団

この資金の運営のために設立されたモハメド・ビン・ザイド財団は、年々支援の範囲を広げてきました。レッドリストに掲載されている絶滅危惧種の保全が対象です。途上国だけを対象としているほかの多くの基金と異なり、この基金は種を対象にしているので、本当に必要な種の保護のために応募することができます。

日本からも、レッドリストに掲載されているサケ科の魚、イトウの保護プロジェクトが支援を受けています。

国際的な自然保護で著名な理事をメンバーに有し、多くの国での事業をフレキシブルで公平に支援してきたモハメド・ビン・ザイド財団への応募と支援実績は年々増加しています。支援実績のデータベースをオンラインで見られることや、年に数回の応募がオンラインでできることも、応募者にとって便利な要素です。
*財団のウェブサイトはこちら


2015/01/09

泡瀬干潟の保全が国際的に急務!緊急に必要な地域リスト(IBAs in Danger)に掲載される。 シドニーWPC⑦

自然保護のための取り組みの一つに、重要な地域を選定して、そこでの保全に資金や人材を集中させるアプローチがあります。世界自然遺産の指定も高い効果があると言われています。日本の自然公園には、国立公園(現在31カ所)、国定公園、都道府県立公園があり、また国や知事が定める鳥獣保護区があります。

*リンク:日本の自然公園に関する法令

生態系の上位に位置し、研究と保護が進んでいる鳥は、重要な生態系の指標。

IBAsとは

それぞれの国の取り組みの他に、国際的な枠組みで指定やリストアップされている重点保護地域もあります。IUCN(国際自然保護連合)やそのメンバーであるNGOなどが手がけていて、多くのものは、各国の取り組みと連携しています。

国際的な野鳥保護のネットワーク、バードライフ・インターナショナルは、「国際的に重要な生物多様性と野鳥生息地域(Important Bird and Biodiversity Areas、以下IBAs)」をリストアップしています。バードライフ・インターナショナル・アジアのウェブサイトによると、現在、世界で12,126ヵ所、日本では166ヵ所が登録されています。生物種のなかでも、鳥については、かなり早い時期に保全の取り組みの仕組みづくりとネットワークづくりが行われました。これは、世界中に鳥を愛するたくさんの人々のおかげだと思います。また、鳥は生態系の健全性を示す指標として優れていることから、IBAsは、国際的かつ科学的な指標として信頼され、さらに多くの種を対象とした保全に関する「重要生物多様性保全地域(Key Biodiversity Areas, KBAs)」のベースになっています。


泡瀬干潟の保全が急務!


緊急な保全が必要な世界のIBAsの地図。「日本はないのかな」と思ってみていたら、泡瀬干潟が。
出典:http://www.birdlife.org/datazone/userfiles/file/IBAs/pubs/IBAsInDanger2014.pdf

バードライフ・インターナショナルは、2014年の危機的な状況にあるIBAsのリストを作りました。102カ国から356カ所が、緊急に保全の必要な場所として選ばれたのです。このパンフレットがWPCで配られ、また、KBAsのセッションでもプレゼンテーションが行われました。

危機リストのなかに、日本からただ一カ所、沖縄の泡瀬干潟が入っていました。

240番が泡瀬干潟

泡瀬干潟は、南西諸島でも最大級の規模の干潟で、多くの希少生物が生息していますが、いま、干潟の埋立事業が、環境保全上の争点となっています。泡瀬干潟の保全を訴える「自然の権利」訴訟が行われており、2月24日に判決が出る見込みだそうです。

昨年、沖縄県では翁長新知事が選出されました。日本のなかでもとくに豊かでかつ繊細な生物多様性を有する沖縄での今後の自然保護がどう動くのか。目が離せません。