Translate

2013/12/25

マダガスカル大統領選挙!4年にわたる政情経済不安を解決し、貴重な自然と国民の生活を守るとき

12月20日にマダガスカルで大統領選挙が実施されました。4年間に続く政治的・経済的混乱を終結させることを、国内外の多くの人々が望んでいます。この選挙結果は来年1月7日に発表される予定です。

首都アンタナナリボ


マダガスカルのキツネザル(Coquerel's sifaka)

バオバブやキツネザル(レムール)などのユニークな自然で知られるマダガスカルですが、実は、2009年1月以降、政治的な混乱が続いています。

クーデターで実験を握った元ディスクジョッキーのラジョエリナ(Rajoelina)大統領が3月に就任。前大統領のマーク・ラヴァルマナナ(Ravalomanana)氏は国外に亡命しました。

今年1月に、ラジョエリナ大統領とラヴァルマナナ前大統領とも、次の大統領選に出馬しないとの声明を出しました。10月25日に実施された第1回選挙では、過半数を超えた得票者がいなかったため、今回、ラヴァルマナナ氏側のRobinson Jean Louis氏とラジョエリナ氏側のHery Rajaonarimampianina氏の二人の候補者の決選投票です。

クーデター後の暫定政府は国際社会から認められず、海外からの支援資金がストップ。支援を受けていた多くの自然保護プロジェクトは中止や延期に追い込まれたのです。国立公園や保護区では、十分な監視が行き届かず、貴重な自然が破壊されています。

とりわけ深刻な問題のひとつが、ローズウッドなどの高級木材を狙った違法伐採です。最大の仕向地は高級家具材として需要が急増している中国です。また、欧米では、楽器、チェス、高級床材などに使用されます。暫定政府のもとで、原木の輸出が合法化され、違法伐採に拍車がかかりました。すぐに国際社会からの批判が高まり、高級木材の輸出が禁止されますが、それでも、密輸は続き、2011年7月には、島の北西部にある港から、60万ドル相当のローズウッドのコンテナ6箱が押収されました。

多くの丘陵地には木が残されていない。土壌浸食が激しい。

上流の土壌浸食で、手前の川は土色。奥の川の上流部にはまだ森が残っている。


ヘサキリクガメ
違法狩猟も深刻です。マダガスカルの希少な絶滅の危機にある生き物たちは、ペットとして人気があり、非常に高い値段で取引されます。2013年のはじめの3ヶ月だけで、1000頭以上ホウシャリクガメ(radiated tortoise)ヘサキリクガメ(ploughshare tortoise)が押収されました。野生生物取引をモニタリングする国際NGOのTrafficによると、いまやヘサキリクガメは、違法な野生生物取引で名高いバンコクのチャトチャック市場で普通に見かけるようになったそうです。


マダガスカルの野生動植物違法取引防止に取り組む団体
Wildlife Conservation Society
Durrell Wildlife Conservation Trust
Turtle Survival Alliance
Madagascar Biodiversity Partnership
Turtle Conservancy
Conservation International
World Wildlife Fund

いつも驚いたような
まん丸い目をしているシファカ
マダガスカルの代表的な生き物、キツネザル(レムール)は、ブッシュミートにより危機が高まっています。違法狩猟者は、監視の弱まった国立公園でキツネザルを捕まえ、高級食材として都会の珍味レストランに売っているのです。また、木材を違法伐採する業者が自分たち用に森の中で調達する食材としても、すでに絶滅の危機に瀕するキツネザルが食べられています。

マダガスカルの大きな収入源は観光です。しかし、政情不安に加え、国立公園や保護区が荒らされ、動植物がいなくなってしまえば、将来の収入は見込めません。

長期的な政治の不安定は、国民の生活を直接不安定にさせるだけでなく、その混乱の際に失われる自然資源の劣化によって、将来の国民の生活を支える要素をも減らし続けてしまいます。10人のうち9人が一日2ドル以下の生活を送っているほど貧困度の高いマダガスカルで、その貧困層が最も深刻な影響を受けてしまいます。一刻も早く、この混乱が解消されてほしいと思います。


雰囲気の良いリゾートホテル。観光収入は重要な歳入
有名なバオバブ街道以外でも趣のあるバオバブを見ることができます。
まだあまり知られていない海岸部は美しく、観光のポテンシャルは高そう。

なお、日本政府はこの選挙に関して1億100万円相当を支援しています。 「信頼性のある,自由・公平かつ透明性が確保された大統領選挙及び国民議会選挙が平和裡に実施され,マダガスカル国民の総意が反映された新政権が早期に発足することを強く期待します。」(外務報道官談話より) 全く同意です。 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/page24_000085.html

今回の選挙の様子は日本語ではあまり報道されていませんが、有名なマダガスカル研究者の深澤秀夫氏のブログで速報されています。
http://ameblo.jp/hideofukazawa/

国際的な報道によれば、今回の選挙は「公正・公平」に実施されたと、いまのところ評価されています。結果の発表に続くさまざまな問題の解決が待ち遠しいです。

絶滅の危険度がたいへん高いヤシを植樹。
またここに戻って来れることを友人たちと願い、髪の毛を一緒に埋めました。
マダガスカルのヤシは2012年のレッドリストに掲載され、危機が警告されました。


2013/12/18

リオデジャネイロ!多様でパワフルな街

リオ!リオデジャネイロ!

いよいよワールドカップも来年に。そして、2016年にはオリンピック!ブラジルの急速な変化と多様性を反映している、なんともパワフルな街です。

リオといえば、カーニバル、シュガーローフ、コパカバーナなどのビーチ、イパネマの娘、などなど名物がたくさんあるのですが、そのイメージと言えば、右の写真の中央に、小さーく写っているコルコバードの巨大キリスト像ではないでしょうか。この像は街のほとんどの場所から見ることができます。見える方向から自分がどこにいるのかわかったりも。

右の写真は、リオ植物園から。ここでは、数多くの植物を見ることができます。特に、世界中から集められた樹木の種類は圧巻。植物園の外には、すてきな喫茶店があり、コーヒーもパンなどの軽食もとっても美味しいので、暑さに疲れたらぜひこちらへ。


ビーチの観光地や丘の上の高級住宅街とかなり違う雰囲気なのが、「ファベーラ」と呼ばれる地区です。犯罪者や貧困者がこの地域に集められてできた居住地だと聞きました。警察が常駐しています。生活の質は低く、急な斜面にあるため移動が大変です。イヌがあちこちにいてちょっと恐いです。

急斜面に造作された家々

最近引かれた水道

そんなファベーラからの眺めは抜群


夕方に、リオで有名な観光地、シュガーローフ・マウンテン(Pao de Acucar)を訪れました。すごい急斜面をロッククライミングする冒険野郎もいるそうですが、無難にケーブルカーがおススメです。眺めは実に素晴らしいです。



シュガーローフマウンテンの名前の由来になったお砂糖

シュガーローフ・マウンテンの名前の由来は、山の形がヨーロッパのティータイムで使われていた固まりのお砂糖に似ていたからなのだそうです。このお砂糖はペンチで割って使います。いまでは、由緒あるティーパーティーくらいでしか見かけないかもしれないですね。


リオには個性的ですてきなホテルがたくさんあります。写真は、高台にある隠れ家的なホテル。お庭もお部屋もアメニティもすてきなのですが、滞在二日目にエアコンが故障し、せっかくのお部屋にいる時間が楽しめず・・。


ホテルのロビー

Tatler travel guide 2012で「101 best hotels of the world」に選ばれています



2013/12/16

ブラジル、巨大な街・サンパウロ

ブラジルの首都サンパウロを初めて飛行機から見たときの第一印象は、「うわ、NYだ!!」。飛行機の窓から、高いビルがそびえ立ち、街に光が溢れているサンパウロの大きさに圧倒されたのです。このときは、リオでの会議に向かっている途中のトランジットで夜の到着でした。

そして、翌年またサンパウロを訪れる機会を得ました。この街は、やはり大きい。市内には2つの空港があり、市内にある近距離便用の空港は、街の中心地にあります。林立するビルのあまりにもすぐ真上を離着陸の飛行機が通過して行くのです。


滑走路のすぐ脇に住宅やオフィスが


近代的なビルが多く並ぶ中、緑の多い古くからの住宅地も残されているのですが、そのコントラストは強烈です。

前が昔からの高級住宅地。写真奥にはビルが建ち並んでいるのが見えます

ホテルの円形窓からみた街の景色



街のなかにあるイビラプエラ公園は、市民の憩いの場所です。ジョギングや体操をしている人、スケボーしている人、楽器を演奏しているグループ、など、みなさん思い思いに過ごしています。売店も多く、暑さにめげるたびについ立ち止まってアイスを買ってしまいました。合計3個。

広いイビラプエラ公園


サンパウロには、世界最大の日本人街があります。日本名を持つ人に出会うこともしばしば。地球の反対側にたくさん日本人がいると思うと不思議。


2013/11/29

パンタナル湿原の生き物たち ②鳥

水の豊かなパンタナルでは、多くの水鳥を始め、たくさんの鳥を見ることができます。平地が多く、鳥が留る木も比較的分散して生えていて視界を確保しやすいため、バードウォッチングに格好の場所です。

ジャビル。コテージのすぐそばの池で


コウノトリの仲間の巨大な鳥、ジャビル(Jabiru)にもすぐに出会えました。羽を広げると本当に大きくて、圧倒されます。空を飛ぶ姿は優美で、飛行機に乗っているときにその横に並んで飛んでいるのを見ると、わくわくします。

ヒヤシンスインコ(Hyacinth Macaw、スミレコンゴウインコともいうようです)は、バードウォッチャーのバイブル(?)「BIRDS OF BRAZIL-Pantanal and Cerrado」(John A. Gwynne他)の表紙になっている鳥です。ペットとして捕まることが多く、1980年代には1500羽まで減ってしまいましたが、1990年代に始まった保全プロジェクトが成果をあげ、15年間に3倍まで個体数を増やすことができました。

ヒヤシンスインコのペア

保護プロジェクトのスタッフに抱えられるヒヤシンスインコのひな。
成鳥の羽に生え変わる途中


ほとんど体の大きさくらいあるくちばしを持つオオハシ(Toco Toukan)も人気の鳥です。鮮やかなオレンジ色のくちばしのこの鳥が、青空を背景に飛んで行く様子にはうっとりしてしまいます。

オオハシ

木の穴から顔を出すオオハシ


インコやオウムの仲間は、色鮮やかです。たくさんの種類がいますが、くちばしや羽の色で見分けることができます。

Turquoise-fronted Amazon。体長は約38センチメートル


パンタナルでは、タカなどの猛禽類も多く見られます。狩りの様子も頻繁に見ることができました。サバンナホークやその名もロードサイドホークなどを農道からよく見かけます。

サバンナホーク(Savanna Hawk)。体長約60センチメートル

農場のオーナーのリタさん。超一級のネーチャーガイド


滞在したコテージのオーナーのリタさんは鳥に詳しく、名前や種だけでなく、いつどこでどんな鳥が見られるかかなり完璧に把握。写真を撮る間もじっくり待ってくれます。日本人ファンも結構いるみたいで、ビジターノートには日本語の感謝・感激のメッセージがいくつも寄せられていました。


2013/11/19

パンタナル湿原の生き物たち ①ホ乳類

南米パンタナル湿原では、多くの野生動物に出会うことができます。アフリカのサファリを楽しんだ人々が、大型の鳥たち、ほ乳類、は虫類を見るために次に訪れるのが、実は、ここパンタナルなのです。

乾季でも川の周りには緑が広がります。ここにはオオカワウソがいます

固有種は少ないのですが、多様な生き物がいます。植物は3500種、ほ乳類は124種、は虫類は177種、両生類は41種、そして、少なくとも423種の鳥がいます。淡水魚は325種が確認されています。

参考:「PANTANAL-South America's Wetland Jewel」Russel A. Mittermeier 他, 2005年


パンタナルのスター的動物といえば、カピバラ。世界で最大のげっ歯類でネズミの仲間です。おとなしい性格といわれ、日本の動物園でも人気者。群れでいることが多く、のんびりと草を食む様子がかわいくて、目を細めるとこっちまで気持ちが和みます。泳ぎが上手です。

カピバラと小鳥(おそらくyellow-bellied elaenia)
群れで泳ぐカピバラ。水のなかにいると生き生きしてみえます

オオアリクイもパンタナルの代表的な動物です。不思議なことに、あるファゼンダ(農場)では全くオオアリクイを見つけられなかったのに、別のファゼンダには、たくさんのオオアリクイがいました。人間をあまり気にせず、食事(アリ)に専念していました。

オオアリクイは、木の根の下にすむアリ探査に夢中

アリヅカ。シロアリは、アリクイやオオアルマジロの食料です

オオアリクイが見つけられなかったファゼンダでは、コアリクイに出会うことができました。しっぽの形が全然違います。オオアリクイはふさふさでしたが、コアリクイのしっぽは細いです。

夜のサファリで出会ったコアリクイ。ぬいぐるみみたい

草原でときどき出会えるのが、アルマジロ。オオアルマジロには会えなかったのですが、ムツオビアルマジロを何匹か見かけました。

走り去ろうとするアルマジロ
ウシの群れの中を走り去るアルマジロ

動物を見に行くサファリは、朝や夕方の他、夜もありました。闇の中では、昼間とは違う顔を見せる動物たち。ジャガーやキツネなどのハンターもいます。写真がかなり不鮮明ですが、ご参考になればと思ってのせました。

ジャガー。美しい!
パンタナルのキツネ(club-eating fox)

パンタナル湿原。日が沈んだ直後。光がきれい。杭の上に鳥。カピバラが泳いでいます




世界で最も美しい場所のひとつ。南米のパンタナル湿原を飛ぶ

南米の真ん中、ブラジル、ボリビア、パラグアイにまたがって広がる湿原パンタナルへ行ってきました。南米の宝石ともいわれるこの湿原には、乾季と水が氾濫する時期があり、季節的な氾濫の時期には、広い大地が水で覆われ多くの生き物であふれます。その生態系の貴重さから、2001年にユネスコの世界自然遺産に登録された、21万平方キロメートルの世界最大の湿原です。

パンタナルの7割はブラジル。2割がボリビア、1割がパラグアイ

ここでの日常の移動は、まず小型飛行機。とにかく広いのです。ファゼンダといわれる農場の間を移動する時も、飛行機が一番便利でした。

草地の部分は、洪水の時期には水で覆われます


低空で飛ぶので、眼下にウシの群れが草を食む様子や、仲間と飛ぶ鳥の群れを上から見て、まさに空中散歩。

飛んでいく鳥たちを空から見下ろす(ほぼ中央部の白い点々が鳥)

パンタナルに隣接するのが、ブラジルの草原地帯セラード(Cerrado。現地発音ではセハード)。サバンナ気候で、牧畜や近年は大豆生産などが行われています。NHKで2011年に放送された番組で、福山雅治さんが印象的な光るアリ塚を観察した場所です。セラードの標高は、約1000メートル。この広い台地を横切ると、急に土地が海抜100メートル程度に落ち込み、パンタナル湿原が現れます。その境目にあるのが、巨大なサンドストーンの崖。

前方のサンドストーンの崖から先がパンタナル。眼下のセラードはサバンナの台地です。
パイロットが崖の近くを飛んでくれました。
セラード。放牧地と農地が広がっています。

雨季に訪れたときのパンタナル。水で満たされています。

パンタナルはその歴史的背景、土壌の性質、植生、主要な川によって、10の地域に分けられます。11月から3月が雨季で、年間に1000から1700ミリの降水量があります。



2013/11/01

カエルが名物?! 中世の町並みが魅力のスペイン・サラマンカ

WILD10が開催されたサラマンカは、スペインの首都マドリッドから車で約2時間の距離に位置します。サラマンカの旧市街は、中世の面影を感じさせる石の道と暖かみのある色の石の建物が並び、とても美しく、ユネスコの世界遺産に登録されています。

サラマンカ旧市街


この街の名物はなんとカエル。街のお土産物屋さんにはずらっとカエルグッズが並んでいます。その由来は、市の中核ともいえるサラマンカ大学の壁面をみるとわかります。いや、実は一見ではわからないかも・・。じーっと目を凝らして探すと、カエルがいるんです!「誰の助けも借りずに見つけると願いが叶う」とも言われているので、あえてここではアップ写真をのせませんよー。

街にあふれるカエル土産たち。合格祈願に買って行く人も多いとか

大学前のカエルグッズ売りのおじさんが
カエルの場所を教えてくれちゃうかも(^ ^;)
このおじさんの売ってるグッズは他の
お土産屋さんにはないものばかり

サラマンカ大学の前壁。装飾に圧倒されます


市の中核とも言えるこのサラマンカ大学は、オックスフォードやパリなどとともにヨーロッパで最も古い4大学の一つ。サラマンカは学生の街なんです。

Plaza Mayor。いつも観光客で賑わっています。観光案内所もこの一角に


スペインの名物といえば、小皿料理タパス。いろいろな料理を少しずつ注文できて便利です。お手頃価格で美味しいスペイン・ワインをお供に楽しむことができます。ここには、お昼寝の習慣があり、ランチタイムの後、多くのお店は閉まってしまいます。そして夕方から営業再開。そして、夜中まで賑やかさが続きます。

名物イベリコ・ハムのタパス!絶品


経済危機に見舞われていたスペインは、WILD10で取り上げられた「ヨーロッパの原生自然回帰」を伝えるのに、実はなかなかのロケーション。困難な経済状況ために開発が行われなくなった結果、植生や野生動物が戻ってきているからです。今こそ、新たな道を見つけるチャンスのときといえます。


ところで、「原生自然」というと、なんだかピンとこない人が多いかも。「ありのままの自然」と訳すとわかりやすいかもしれません。

人の生活との調和の中で保たれる里山のような自然もありますが、手つかずだからこそ守れる自然もあり、そういう場所が残っているからこそ、まだ私たちの気づいていない多くの恵みが保たれ、多くの生き物や人の生活も支えられています。