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2013/09/21

絶滅の危険が高まるスマトラサイ

スマトラの国立公園で、スマトラサイにあいました。その横顔は、なんとなく哲学的な趣。



絶滅の危機にあるサイ
アフリカに2種、アジアに3種と世界に5種類のサイがいますが、すべて絶滅の危機に瀕しています。なかでも、スマトラサイ(学名Dicerorhinus sumatrensis)は、IUCNのレッドリストで危険度が最も高いCRにランクされ、スマトラに200頭前後しか残っていません。マレー半島にも生息していましたが、いまでは絶滅してしまったと考えられています。

現在も個体数は減少しています。その大きな原因は、生息地の破壊と角などを狙った密猟です。すべてのサイは、ワシントン条約付属書Ⅰに掲載され、商業上の輸出入が禁止されていますが、それにも関わらず、密輸、密猟が後を絶ちません。サイの角は髪と同じ成分なのですが、難病に効くと迷信されていて、中国やベトナムなどにはどんなに高くても買うという人々がいるのです。

いまやサイの角は、薬でなくて「毒」
取り締まりなどではサイを守る上で十分な効果が上がらず、あまりに密猟が深刻なので、最近、南アフリカなどで保護のための新たな手段が始まりました。角に毒を注射するのです。人に害のある毒ですが、サイには問題がないものです。サイの角はもはや薬ではなく、毒なのです。

関連記事:
「アフリカ野生生物保護区では、密猟を防ぐために角に毒を」
http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-22284638

http://www.theguardian.com/environment/2013/apr/04/rhino-horns-poisoned-poachers-protect

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2335274/Rhino-horns-poisoned-painted-PINK-poachers-away-revolutionary-scheme-South-Africa.html


難しい繁殖
スマトラサイは飼育も難しく、飼育例は世界で20頭ほどと少なく、繁殖成功例も非常に少ないです。ただ、2012年には、スマトラで子どもが誕生し、大きな明るいニュースをもたらしました。この子は、Andatuと名付けられました。「神の贈り物」というすてきな意味です。現在は1歳。だんだん角も伸びてきて、そろそろ母親から離れる時期が近づいていますが、まだ母親に甘えています。

1歳になったAndatu。「神の贈り物」
Andatuの誕生を通して、いままで謎に包まれていたスマトラサイの繁殖について、少しづつわかってきたそうです。

たとえば、交尾は乱闘しているのかに思えるくらい激しいそうで、体には大きなかみ傷が残っていました。

また、妊娠したかと飼育員が喜んだのもつかの間、胎児が母親の体に取り込まれてしまうことも何度もあり、妊娠継続して出産に至ることは難しいそうです。

もしかしたら、このこともスマトラサイの個体数があまり増えない理由になっているのかもしれません。






2013/09/20

大都市ジャカルタは、より大型、より高級に。



多数の島を持つインドネシアの首都・ジャカルタは、この国の多様な自然と文化を訪ねる旅の最大の拠点です。

7年ぶりに訪れたこの大都市は、今まで以上の活気を放っていました。まず、スカルノ・ハッタ空港がきれいで便利になっていてびっくり。そして、空港からの道中、周囲を走っている車が新しい。おしゃれなお店も増えていました。最新の高層ビルや一流ホテルも増え、大型のショッピングセンターもあちこちにできていて、世界からの一流品が並んでいます。

歩道も以前よりゴミや物乞いが減ってます。ただ、ときどき平らでないところとやいきなりの穴とかもあるので、気をつけて歩かないと。渋滞がひどくない週末なら、ベモやタクシーにのれば、お手頃価格で中心部を移動できます。

オーガニックレストラン

雰囲気の良いベトナム風レストラン。
ベトナムコーヒーとコロッケが美味しい!

このコーヒー屋さん、いろんなコーヒーがいろんな飲み方で注文できます


インドネシアで調査などを行う際に、ジャカルタは情報収集とネットワークに重要な場所です。国際機関やNGO、政府機関や大使館関係、主要関係者へのアクセスが集中しているからです。

フィールドから帰ったあと、熱いシャワーを浴びることができ、たくさんの食べ物の選択肢があり、たくさんの人のうごめく様子を感じられることなども、熱帯以外の国からの訪問者に休息をくれる場所とも言えるかもしれません。

ただ、渋滞はものすごいです。上空の空気もヘイズっぽい日が多いのは、排気ガスの影響もあるかもしれません。友人一家は、最近の渋滞のひどさと空気のひどさに、緑の多い近隣のボゴールへ引っ越しを決めたそうです。

インドネシアは、森林保護を含めた気候変動への取り組みを強化を表明しているのですが、経済発展にともない、自然資源の開発や土地の転用によって森林が急激に減少しています。森にすんでいた希少動物もどんどん減っています。一方、希望になるのは、エコツアーが増え、自然への市民の関心が高まっていることと、環境学習が増えてきていること。子供たちの世代から、新しい自然保護を基盤にした経済や政治を行うリーダーが育ってくるのを期待しています。

昔ながらのサテ屋さんも健在で美味しい。
ひたすら串刺しを作る男たち



2013/09/02

「変態」ー生き残りのために、自分のペースで生きる

一生のうちに形を変えて生きる動物がいます。これは「変態」といわれ、毛虫がサナギを経て蝶になることや、オタマジャクシがカエルになることなどはよく知られている例です。

長年地面の下で暮らしてきたセミ。
まもなく成虫になって現れます
変態後の動物は、見た目が変わるだけでなく生き方をかえます。蝶の多くは、幼虫のときには、葉を食べ、植物の上を歩いていましたが、変態後は、羽を広げ、飛びます。そして、交尾によって子孫を残します。セミも地面からでると飛び立ち、鳴き、子孫を残します。

先日見たTV番組で、オタマジャクシの専門家が興味深いことを話していました。オタマジャクシがカエルになる時期は、一緒に生まれた個体たちの間でも異なるそうです。

それは、生き残りのため。オタマジャクシの時期はエラ呼吸ですが、すみかの水場の水が干上がるなどの危険を察知するとオタマジャクシになる時期を早めたり、仲間が食べられたり死んだりすると、やはり早くカエルになるそうです。一方、たくさんえさを食べることができた個体は、カエルになる時期が遅く、栄養のおかげで、大きく丈夫な個体になるそうです。なかにはオタマジャクシのまま冬を越す個体もいるそうです。


オタマジャクシたちの運命は、
それぞれ違うみたい

大きなカエルになれば、良い子孫を残す確率は高くなりますが、その前に死んでしまう恐れがある場合には、小さくてもカエルになっておけば子孫を残せます。多様な生き方をすることで、DNAを残せる確率が高まります。

人間でも、人によって華やかな時期は異なります。早く結婚して子供を産む人もいるし、社会経験を積んで力をつけてからパートナー探しをする人もいます。その人によって人生の道のりが違うのは、もしかしたら生き物としてわたしたちのDNAに組み込まれていることかもしれません。人の生き方や言葉に左右されずに、自分らしく、自分のペースで生きるのが自然なことなのだと思います。