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2017/12/30

白い崖のセブンシスターズでバードウォッチング

白い断崖、セブンシスターズ。最近、中国人観光客急増中で、
現地の人に聞くと彼らは「伝説」を求めて訪れるとか・・

ロンドン発ブライトン行き


冬のロンドンで青空が見える日が続いたのは、とってもラッキーだったが、クリスマスデコレーションの華やかさと、買い物や観光の客たちで賑わう通りにしばらくいたら、ちょっと抜け出して海が見たくなってしまった。

イギリス北方面は寒いので、南部の海岸に行くことに決めた。日本では「海なし」の数県を除けば海行くのにそれほどの時間はかからないように、イギリスも島国なので、大抵の町からは最短距離の海岸に数時間の移動で行くことができる。

今回向かうのは、ビーチリゾートで知られるブライトン。ロンドンを出たのはお昼だったけれど、日が短いせいか、到着した時はすでに真っ暗だった。

翌朝、7時。まだあたりは暗い。頻繁に通っている12番のバスでセブンシスターズまで行くことができる。大抵の乗客は地元の人のようだ。観光でイギリスの2階建バスに乗るなら、特等席は2階の最前列。進行方向右は海岸で左には住宅地。かなりの各駅停車で2時間近くかかったけれど、細い住宅地の道やセメント工場の脇を通り抜けて行く道中を楽しめた。


イギリスの自然を楽しむフットパス


セブンシスターズ近くのフットパスの脇を流れる川。
白鳥が2羽浮かんでいた。カヌーに乗ることもできる。

イギリスでは自然の中を歩くことをみんなで楽しもう、という精神で、国中にフットパスが巡らされている。大抵は農村部にあり、羊などが逃げ出さないように柵はあるが、通行者が開け閉めすることができる。


セブンシスターズは国立公園だ。面白いことに、国立公園案内リーフレットは、崖の雄大な様子を一番よく見たいなら、崖すぐそばの道でなく、少し離れたフットパスを通り農家のコテージの裏に出るようにと紹介している。

幾つか海岸に出るパスがあるが、時間がない場合は、農場を通るこのフットパスが一番だろう。しかも、このフットパスでは一番多くの種類の鳥に出会うことができる。

バードウォッチング


シーズンオフの早い時間に訪れたせいか、ほとんど人は歩いていなくて、時々、犬を散歩させている地元の人とすれ違ったくらい。双眼鏡を携えているビジターは、このときはわたしだけだった。まずは水鳥に出会う。カモ類、サギ、チドリ、シギ、カモメなど次から次に水鳥が現れる。なかでもカナダ雁の群れは相当の数で迫力があった。じっと川辺に立っているのはアオサギ。砂地をシギが数羽ちょこちょこ歩いている。川面に輪があり、少し見ていると潜っていたスズガモが浮かび上がる。川面に出ている杭の上では、鵜が黒い羽を広げる。

コマドリ(ロビン)
このパスはバーダーには嬉しい環境で、海岸、沼地、草原、崖、農場にあるヤブ、と多様な鳥の生息地があり、多様な鳥の観察にもってこいだ。崖の脇には、ツグミ、コマドリ、藪から、ヒタキ、コガラ、ヒガラ、他に、種はわからなかったけれど、黄色の顔のムシクイっぽい小鳥、ケラ類などが飛び立ち、少し進むのにかなり時間が経ってしまうくらい、鳥見を楽しむことができた。

いちばん楽しませてくれたのはコマドリで、シャイですぐ飛び立ってしまうが、やや暗い景色のなかでは腹のオレンジがかなり嬉しい気分にさせてくれた。

危険な断崖。海近くまで階段があり
降りることができる
崖のすぐそばにもコマドリがたくさんいたので、写真をとろうとした。すると、地元の方が近づいてきて、「最近崖が崩れやすくなっていて、端まで行って落ちる人がいるの。落ちたら私たちの税金を使って引き上げるから、困るの。気をつけてね」とイギリス人らしい注意をしてくれた。この辺りの海岸は脆い素材のチョークでできているのだ。危険な崖だが、注意はあるものの、柵はない。

海岸もやや危険。別のパスを通って砂利の海岸まで出てみたが、ちょうど潮が満ちてくる時で、急に波がやってきたのだ。何かあれば誰かが助けてくれる、なんて見込みは通用しないのだ。







散策の後は公園内にあるカフェへ。食事やお茶メニューも充実!


ブライトンの街


午後に街に戻った。ブランドショップやおしゃれなカフェ、レストランが並び、観光客も多い。ロンドンから気軽にこれる海辺は本当に便利だ。ここに「宮殿」を作ったジョージ4世の時代から、ファッショナブルなビーチリゾートとして発展したそうだ。ロイヤルパビリオンでは、ジョージ4世の恥ずかしいくらいの浪費生活や当時の文化、世界大戦の時に、傷を負ったインド人兵士のための病院に使われたなどの歴史も紹介されている。

ブランドショップも多くリッチなブライトンはミニ・ロンドンと言われています








2017/08/19

グリーン・テキサス③ コウモリの大洞窟



久しぶりに体を動かすと、やけに動きが鈍くなる。これと同じことが文章を書くことにも当てはまるらしい。長いことブログを休んでしまったせいで、再開のきっかけをなかなかつかめなかった。

テキサスに行ったのはだいぶ前になってしまったが、もうひとつ紹介したい印象的な生き物がいる。

それは、コウモリだ。



世界最大のコウモリの乱舞


ここテキサスにあるブラッケン洞窟では、コウモリの大出現を見ることができる。

夕暮れ前に、コウモリの保護に取り組むBats Conservation Internationalのココさんと待ち合わせした。

地図を広げてメキシコオヒキコウモリ保護
プロジェクトについて説明してくれるココさん。
コウモリのデザインのピアスが素敵。
ここに住むコウモリは、メキシコオヒキコウモリ(Mexican free-tailed bats、学名 Tadarida brasiliensis)。なんと1500万もの大群で、世界最大の規模だ。夏の間、ものすごい数のコウモリたちはここで子育てをする。

まず、ココさんがブラッケン洞窟のコウモリと他の生き物との関係、ここでの保全活動に関してブリーフィングをしてくれた。コウモリは、害虫を食べ、糞を肥料としてもたらし、地域の農業に極めて重要な役割を果たしている。また、この地域の猛禽類などの野生動物にとっては、獲物ともなるという。


大洞窟からコウモリの大群が出現


洞窟の周りには蚊が多い。痒さに耐えながら辛抱強くコウモリを待っていたが、なかなか姿が見えなかった。が、少し暗くなってきた頃、ココさんが数匹が動き出したことに気づいた。「始まるわよ!」すぐに洞窟の入り口にたくさんのコウモリが現れた。




彼らはまるでプログラムされているかのように徐々に外に飛び出し連隊を作る。その先がずっと先まで伸びていく。コウモリが形作る螺旋は、形を変えながら何度も大きく回転し、洞窟に戻っていく。螺旋は、何パターンの動きを作り出せるのかを試しているかのように、何度も何度も動きを繰り返す。地上から見ると、まるでドラゴンが空を駆けていくようだ。そういえば、東南アジアの龍の伝説は、コウモリが空を飛ぶ様子から生み出されたという説が有力である。





見事な動きがずっと続いた。しかし、外には危険がある。タカやフクロウなどの猛禽類に捕まり餌になるのだ。彼らがほぼ同じ時間に同じ場所から現れることを捕食者たちは知っていて、特に洞窟から飛び出したばかりのタイミングで狙われやすい。コウモリが動きだすと、穴の上にタカが現れ、コウモリを捕らえて行った。

メキシコオヒキコウモリは重要な食物連鎖の一員

あまりにたくさんのコウモリが飛び交うため、空中で衝突して絡まり地上に落ちてくるものもいる。コウモリは特殊な音波を出して衝突しないように飛ぶことができるそうだが、ここまでの大群だと完璧に衝突を避けることはできないのか。

落下したコウモリは、死んだり、気絶したりする。そんなコウモリを狙って蛇やアライグマがやってくる。コウモリたちはこの地域の生き物にとって重要な食料となっているのだ。

空中で衝突して落下したコウモリ。
感染症の危険があるため触ってはいけない。


この大洞窟には、大学の研究者が定期的に訪れている。研究者が撮影したビデオもYou Tubeなどで公開されている。穴の先には広大な洞窟が広がり、数メートルもコウモリのフンが積み上がっていて、ニオイもなかなか。洞窟の中を歩くのはなかなか大変そうだ。

黒い宝石のニオイ 〜コウモリと南北戦争


フンといえば、ブラッケン洞窟のコウモリは、1860年代にアメリカ南北戦争で重要な役割を果たした。フンから硝石ができる。南部側に加わったテキサス州の戦士たちは、コウモリのフンを銃の火薬に利用したのである。また、1900年代には、フンは肥料として、周辺に農地を抱えるこの地域の重要な産物になる。フンは「黒い宝石」と言われたそうだ。コウモリたちが飛ぶ下に、当時のコウモリ小屋の跡を見ることができる。

コウモリのフンについて設営するボード

コウモリを守る


ココさんは、バット・コンサベーション・インターナショナルでボランティアとして環境教育活動を行っている。

この洞窟の周辺には農地が広がっているが、サンアントニオ市から近く、都市化の波が迫る。もしブラッケン洞窟がなくなってしまえば、1500万匹ものメキシコオヒキコウモリが生きていくことが難しくなる。このコウモリがもたらしてくれた農業への恩恵はなくなり、生態系も大きく変わってしまうだろう。その影響は、テキサスだけにとどまらず、冬を過ごしてきた温暖なメキシコの生態系や人々の営みにも影響を及ぼすはずだ。

土地を買うという自然保護


バット・コンサベーション・インターナショナルは、まずブラッケン洞窟を1992年に購入。次に周辺の農地を購入していった。2014年(ハロウィーンの日!)に自然保護NGOネイチャー・コンサーバンシーが洞窟につながる615ヘクタールを購入し保護活動が後押しされた。しかし、コウモリが飛んでいく方向には大きな市街地がある。まだまだ取り組むことは多い。

ココさんは、小学生や市民にコウモリの面白さや重要性について語り続けている。






ブラッケン洞窟のコウモリと生態系を守るために、Bat Conservation Internationalが10月4日にランニングイベントを行います。コウモリのダイナミックなフライトのビデオで情報をチェックしてみてください。