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2015/01/24

シドニーWPC(世界自然公園会議)でのその他の議論

シドニーWPC では、その他にも多くの議論がありました。

違法野生生物取引に関するセッション。写真は押収された象牙。


なかなかブログで書ききれないので、今後ウェブサイトにレポートを載せる予定です。以下のことについて報告したいと思います。アップしたらお知らせします。

  • 野生生物に関する犯罪ー違法狩猟、取引、法の規制と取り締まり
  • KBAとAZE
  • レッドリスト50周年
  • ツーリズムの可能性
  • 素晴らしい自然保護の取り組みの表彰

子どもたちへの環境教育ツールを紹介するブース


2015/01/09

泡瀬干潟の保全が国際的に急務!緊急に必要な地域リスト(IBAs in Danger)に掲載される。 シドニーWPC⑦

自然保護のための取り組みの一つに、重要な地域を選定して、そこでの保全に資金や人材を集中させるアプローチがあります。世界自然遺産の指定も高い効果があると言われています。日本の自然公園には、国立公園(現在31カ所)、国定公園、都道府県立公園があり、また国や知事が定める鳥獣保護区があります。

*リンク:日本の自然公園に関する法令

生態系の上位に位置し、研究と保護が進んでいる鳥は、重要な生態系の指標。

IBAsとは

それぞれの国の取り組みの他に、国際的な枠組みで指定やリストアップされている重点保護地域もあります。IUCN(国際自然保護連合)やそのメンバーであるNGOなどが手がけていて、多くのものは、各国の取り組みと連携しています。

国際的な野鳥保護のネットワーク、バードライフ・インターナショナルは、「国際的に重要な生物多様性と野鳥生息地域(Important Bird and Biodiversity Areas、以下IBAs)」をリストアップしています。バードライフ・インターナショナル・アジアのウェブサイトによると、現在、世界で12,126ヵ所、日本では166ヵ所が登録されています。生物種のなかでも、鳥については、かなり早い時期に保全の取り組みの仕組みづくりとネットワークづくりが行われました。これは、世界中に鳥を愛するたくさんの人々のおかげだと思います。また、鳥は生態系の健全性を示す指標として優れていることから、IBAsは、国際的かつ科学的な指標として信頼され、さらに多くの種を対象とした保全に関する「重要生物多様性保全地域(Key Biodiversity Areas, KBAs)」のベースになっています。


泡瀬干潟の保全が急務!


緊急な保全が必要な世界のIBAsの地図。「日本はないのかな」と思ってみていたら、泡瀬干潟が。
出典:http://www.birdlife.org/datazone/userfiles/file/IBAs/pubs/IBAsInDanger2014.pdf

バードライフ・インターナショナルは、2014年の危機的な状況にあるIBAsのリストを作りました。102カ国から356カ所が、緊急に保全の必要な場所として選ばれたのです。このパンフレットがWPCで配られ、また、KBAsのセッションでもプレゼンテーションが行われました。

危機リストのなかに、日本からただ一カ所、沖縄の泡瀬干潟が入っていました。

240番が泡瀬干潟

泡瀬干潟は、南西諸島でも最大級の規模の干潟で、多くの希少生物が生息していますが、いま、干潟の埋立事業が、環境保全上の争点となっています。泡瀬干潟の保全を訴える「自然の権利」訴訟が行われており、2月24日に判決が出る見込みだそうです。

昨年、沖縄県では翁長新知事が選出されました。日本のなかでもとくに豊かでかつ繊細な生物多様性を有する沖縄での今後の自然保護がどう動くのか。目が離せません。




2015/01/07

オーストラリアの大自然・ブルーマウンテンへ

しばらく会議の話題が続いたので、街を出てフィールドへ!こういう会議のときのフィールドツアーには生き物や自然の専門家が参加していることが多くて楽しさ数倍なのですが、直前だったので、WPCで申し込めるフィールドツアーは残念ながらどれも満員。

そこで、シドニーから日帰りできるブルーマウンテンへ行くことにしました。レンタカーで片道2時間。お天気も最高!


ブルーマウンテンの展望台。左下に見えるのがスリーシスターズです。

おおお〜!と思わず声を上げてしまう雄大な景観。圧巻はスリーシスターズという大きな岩。伝説によると、三人の美しい姉妹が姿を変えたものだとか。姉妹は違う部族の兄弟たちと恋をします。姉妹の部族はこの恋を許さず、相手の兄弟は力づくで彼女たちを連れて行こうとして、戦が始まりました。部族の賢者は三人の姉妹を岩に変えることに。賢者は後で三人をもとの姿に戻すつもりだったのですが、戦で殺されてしまい、三人をもとの姿に戻す呪文を知る人は誰もいなくなってしまったのです。岩はいまもすらりとした美しい姿で立ち、背後には広い大地に森が広がっています。



キバタン
ビジターセンターは充実しているし、周辺のトレイルもやケーブルカーなども利用しやすくて便利です。少し歩くと、白い体に黄色いとさかがキュートなsulphur crested cckatoo(キバタン)がたくさん舞っていました。オーストラリアとニューギニアおよび周辺に生息しています。ペットとして飼われることも多く、都会では数が増えすぎて鳴き声などが問題にされているところもあるようです。なんと70歳以上も長生きするものもいるそうです。


コアラだよー

ブルーマウンテンまでの途中で寄ったFeatherdale Wildlife動物園では、コアラとのツーショット写真を撮ることができました。一人ずつ順番です。列に並んでいたのは、ほとんど大人たち。キラキラ目を輝かせてはしゃいでいます。そういえば、G20のため訪豪していたプーチン大統領も、コアラを抱いて写真撮影していました。

飼育員がエサでコアラを引きつけるのですが、しばらくすると疲れてしまうので(疲れさせないために)、次のコアラに交替です。数頭のコアラが交替で人間を楽しませてくれていました。

大抵の動物園では、動物やエサのにおいに気づくことが多いのですが、ここでは、アロマオイルにも使われるユーカリなどの葉の香りのおかげで、園の中全体が良い香りでした。



オーストラリアには、カンガルーやコアラなどの有袋類という独特な動物が暮らしています。この状況は、生き物の生存競争(北米などでは他の生き物に捕食され絶滅してしまった)と地球の地殻変動が合わさった結果なのだそうです。

ウォンバット。有袋類です。

ワラビーも有袋類です。





2015/01/05

自然の保護にはコミュニケーション&ネットワーキングが欠かせない! シドニー 世界自然公園会議(WPC) ⑥

シドニー 世界自然公園会議(WPC) の会議やイベントには、議論や発表、提言などの他に、コミュニケーションとネットワーキングの場がたくさんありました。世界中からさまざまな分野で活躍する人々が一同に集まる貴重な機会は、旧交を温め、新しい情報を得、何かを生み出す絶好の場になるのです。

シドニーハーバーへのクルーズ。ライトアップされたオペラハウスや橋がきれい

シドニーハーバー・ナイトクルーズ

ある夜のIUCN(国際自然保護連合)のクルーズでは、会議場とは違う雰囲気で、ワインを片手に景色を楽しみながら、さまざまな人と語らうことができました。

デイタイムのプログラムの前後にはこのような公式・非公式の交流の場がいくつもありました。会議や分科会が同時進行していて、基本的にオープン参加。そのため、早朝ミーティングやディナー、会期前後の専門会議、"Only By Invitation"の会議などが各分野のトップや外部からのハイレベル参加者が集まる機会となっていたようです。

このクルーズにもそんな気配があちこちに。新しいアイデアやネットワークができるのもこんな機会から。国際的な自然保護の舞台では、政治家や経済分野の要人、オピニオンリーダーなどとの交渉や関係づくりが極めて重要です。自然や科学、社会活動などの専門のほかに、社交術が欠かせません。世界の自然保護に関する知識や人に関する知識、自分の体験や知識を楽しく伝えることができる話術、人の話しを聞く力。立場や状況を正しく判断してプロトコルに従うこと(例えば、他の人が主役のイベントにその人より目立つ着物を着ていくとかはあり得ない)などをわきまえていない人は、いつかいなくなっていきます。

パーティーに行こう!

「日本の会社員は、酒を飲んでやっと本音で話す」と欧米の友人たちはよく批判しますが、なんの。世界のあちこちでそういう場を見てきました。食事会や職場でのハッピーアワー、互いの家庭訪問などを通して本音を探ることは、国籍にこだわらず行われています。(日本人会社員の問題は、わたしも然うの傾向があるのですが、お酒に弱い人が多いことかも)

環境NGOやネットワークによるキャンペーン「Nature Needs Half」のパーティーは、要職の人たちから若者まで会場に溢れるほどの人が集合。呼びかけやメッセージを伝えたり、資料が配られたり。たくさんの飲み物と美味しいつまみ。普段は会うことが難しいレベルの人をつかまえて話しができるのも、ちょっとアルコールが入ってのカジュアルな機会ならではです。ラップ・シンガーが「生物多様性」をテーマにしたラップミュージックを歌い始めると会話は難しくなりましたが。。

マダガスカル大統領のレセプション

マダガスカル大統領が自然保護の取り組みについて語る。
会議場近くのホテルで行われたマダガスカル政府主催のカクテルパーティーでは、マダガスカルの生物多様性を紹介するビデオが上映され、マダガスカル大統領が自然保護への取り組みの意欲を語り、マダガスカルの多様な自然保護に取り組む参加者たちと交流しました。このような場でのコンサベーショニストたちからの働きかけが、生物多様性保全のスケールアップをするというクロージングでの大統領の画期的な発表につながっていったのかもしれません。

マダガスカル生物多様性基金のウェブサイトで、WPCでの大統領の発言のビデオを見ることができます。
madagascarbiodiversityfund.org

余談ですが、このパーティの翌日、ホテルのセキュリティが一気に強化されました。報道陣もたくさん。この会議中で一番たくさんのTVカメラと報道用カメラをみました。「大統領や政府高官がとまってるからかな?でもいきなりこれは変だなー」と思って、マダガスカル人の友人に「ハディ大統領が滞在しているからかな?」と聞くと、「うーん。ウチの大統領がそれくらい重視されてるといいんだけど。」

実は、同じ時期にブリスベンで開催されていたG20に参加していたインドのモディ首相が宿泊したためとあとで判明。モディ首相はシドニーでオーストラリアに住むインド人数千人への演説をしたと、翌日の新聞で大きく報道されていました。


ト―マス・フリードマン(Thomas Friedman)氏、「ブリスベンより重要だ」

この期間中、オーストラリアの新聞はG20に関しての記事ばかり。ほとんどの新聞社は記者をシドニーではなくブリスベンに向かわせたようです。韓国の新聞記者を一人だけ見かけましたが、日本からの取材の人を見かけることはありませんでした。

IUCN関係者によると、今回参加した国際的なジャーナリストは、トム(トーマス)・フリードマン氏だけ。自然保護に関する広報方針は、より戦略的にしていく必要があると痛感しました。自然保護の分野の人々へのアピールだけでは足りません。各国のディシジョンメーカー(決定権をもつ人たち)や一般市民に自然保護を訴えるには、まずその媒介者になりうるジャーナリストたちに、自然を守ることは、私たちの人権や経済や日常生活を守ること、と訴え続けて行かなければ。もちろんジャーナリストたちは知識でそう知っているでしょう。でも実際に現場で活動する人たちとの関係を築き、情報を常にアップデートしていくことで、より多くの情報が市民やディシジョンメーカーに伝わるはずです。

トムはステージで、「ジャーナリストたちはブリスベンだけでなくシドニーに、この大事な議論の場にいるべきだ!」と嘆いていました。この著名なジャーナリストの現場からの声がコラムとしてNYタイムズに掲載されたことは本当によかったです。

NYタイムズのトム・フリードマンの記事


分科会ストリーム5で議論をリードするフリードマン氏。
「SNSのつぶやきは広い銀河に言葉を投げているようなもの。
Facebookでなく本当のfaceに訴えよう!」






2014/12/22

シドニー 世界自然公園会議(WPC) ⑤ 保護区に関する議論

Parks, People, Plant

World Parks Congress(WPC)のParksとは、自然保護区を意味しています。保護区を設けることは、希少な生き物や自然の恵みを守るために、最も効果的な方法の一つとされていて、生物多様性条約の愛知ターゲットでも、2020年までに陸地の17パーセント、海域の10パーセントを保護区にすることを目標にしています。


Parks(自然保護区)に関するパネルディスカッション。

分科会に先立ち行われた3つの小全体会議のうち、保護区(Parks)の全体会議では、ロンドン動物学会のジョナサン・ベリー氏がモデレーター。保護区の維持には、トラッキングや衛星情報の活用など高い費用が課題になっていることを説明しました。基調講演で、生態系保護協会(Society for Conservation Society)のジェームズ・ワトソン氏、続くパネルディスカッションでは、さまざまな国立公園の経験が紹介され、自然を回復させるために、地域の住民の協力が不可欠であることなどが強調されました。

Peopleでは、若者を啓発し人間関係を築いていくことの重要性、都市計画において保護区考察・対応を芯におく必要性などが語られました。Planetのセッションでは、NASAの17の衛星が気温や海面、降雨などの環境条件をモニターしていることや、社会経済的価値を生み出す森と川と海の連関を表す「Satoyama(里山)」の考え方に基づいた「グリーン復興」の一環として三陸復興国立公園の設立が進められていることなどが紹介されました。


Ocean is Our Life and Future

今回、海と若者が特に注目を集めていました。海洋生物学者のシルビア・アールさんは、ダーバンでは十分海洋に関する議論がなされなかったことや、まだまだ保護区の面積が10パーセントという目的に達していないこと、また、公海での海洋保護区の重要性を指摘し、「次の10年がこれからの1万年のうちで最も重要」であると訴えました。

スピーカーの紹介。左端がシルビア・アールさん。


また、既述しましたが、開会式には太平洋のいくつかの島から大統領が参加。パラオはEEZ(排他的経済水域)すべてを海洋保護区にし、すべての商業漁業を止めることをアナウンスしました。またキリバス大統領は、EEZの11パーセントを占める同国海洋保護区で、来年1月から商業漁業を禁止することを説明。環境NGOのTNCやCI、米国政府などとの国際的な協力によって、2004年に立ち上げたミクロネシアの挑戦(Micronesia Challenge)、2006年のフェニックス諸島海洋保護区、2009年の太平洋海洋国家イニシアチブ、さらに今後も海洋保護区の規模と保護が拡大されていくことを話しました。

複数の会議がいろいろな場所で進行して行くのですが、International Institute for Sustainable Developmentが配布している瓦版(Bulletin)で、どんな議論や発表がほかで行われていたのかを知ることができました。この瓦版はオンラインで見ることができます。

12日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num10e.pdf
13日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num11e.pdf
14日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num12e.pdf
15日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num13e.pdf
17日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num14e.pdf
18日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num15e.pdf


いくつかのスピーチからのメモ

  • 「自然」を開発や産業のコアにおくこと。消費パターンの変更
  • 先住民族の人たちにもっと働く場を設ける必要性
  • 自然保護と開発が相容れない場合にも、対決でなく、対話すべき
  • 大企業が「よいビジネス」を行うためには何が必要か。
  • 自然資本の考え方
  • グッド・ガバナンス、強いリーダーシップ、情報が重要
  • 保護区によって、SDG(国連の持続可能な目標)達成への貢献

自然ツーリズム

バードウォッチングは成功しているツーリズムの一例。
すでに大きな観光産業になっています。
ツーリズム(観光産業)には保護区での環境保全を強化できる可能性があります。自然ツーリズム(Nature Base Tourism)を民間資本で主導し環境整備に投資すること、公共と民間のパートナーシップを作り上げること、利益をコミュニティへもたらすことなどが重要だと指摘がありました。また、コスタリカやルワンダなどで、自然ツーリズムが成功し、水源地の保全やコミュニティの収入向上に貢献していることが紹介されました。




2014/12/19

シドニー 世界自然公園会議(WPC) ④ 会議の進み方とペーパーレス化

広い会場で、さまざまなテーマの議論が進行しました。会議は、全体会議、Park(公園),People(人)、Planet(わたしたちの地球)の3つの小全体会議、8つの分科会、主要テーマのセッション、世界のリーダーたちによる対話、ワークショップがあります。また、パビリオンでは、国や団体によるブースや展示、ミニイベントが行われました。

WPCの受付。

ペーパーレス会議

これらのたくさんの会議のスケジュールを自分自身で把握するのも一苦労なのですが、今回の特長はペーパーレスです。パソコンや携帯電話やタブレットに会議のappをダウンロードして自分のスケジュールを管理することができました。いままで国際会議に行くと、大抵、受付で分厚い会議スケジュールや資料を、それらを入れるバッグと一緒に受け取っていましたが、今回はネームタグだけ。あれ?っと一瞬は物足りなく思いましたが、シンプルだし、紙を使わなくてすむし、会議中や帰りの荷物も軽くなって、とてもよかったです。

会場の周囲にWPCの旗。

ストリーム

8つの分科会(ストリーム)は、次のように分かれていて、それぞれの分科会からの報告が「シドニーの約束」に反映されていきます。

分科会1は、Reaching Conservation Goals(保全目標への到達)。適切に計画され運営されている保護区が保全に取って不可欠であることを示します。IUCN世界保護区委員会や種の保存委員会などが議論をリード。世界自然遺産などに関して議論が行われました。

分科会2は、Responding to Climate Change(気候変動への対応)。自然のシステムの回復は、気候変動への対応力をもたらします。保護区をつなげて機能を強化させることによって、水を蓄える力、人と野生生物の衝突の減少、エコシステムサービスの提供などに成功したケニアの事例などが発表されました。

分科会3は、Improving Health and Well-Being: Healthy Parks Healthy People(健康で幸せな生活)。2045年までに8割の人が都市で生活しているといわれています。人々が日常的に触れることのできる都会の自然公園がいかに大切か、都市にグリーンベルトを設けることで生物多様性と人の生活が著しく改善され、経済的な効果も高いことが報告されました。

分科会4は、Supporting Human Life(人の生活を支える)。人の暮らしの持続的な発展のために、保護区がもたらす社会経済的な恵みについて。例えば、食料、飲料や産業用の水、防災機能などです。自然を守るための資金のしくみなどについて紹介されました。

分科会5は、Reconciling Development Challenges(発展目標との融合)。経済発展と自然保護とのバランスをどう見つけるか。

分科会6は、Enhancing Diversity and Quality of Governance(多様性とガバナンスの質の強化)。

分科会7は、Respecting Indigenous and Traditional Knowledge and Culture(先住民族と伝統的な知識と文化への敬意)。伝統的な知識を持つ人々が保護区の仕事につけず、“正式”な教育を受けた人だけが職を得ることができる現状を変える必要性が指摘されました。

分科会8は、Inspiring a New Generation(若者を立ち上げさせよう)。開会式でも若者の行動の重要性が強調されていました。若者の声には、人を動かす力があります。カナダやオーストラリアなどからいくつものアプローチが紹介されました。



会議場でのランチ。。
小全体会議や上記の分科会は平行して開催されているので、関心のあるテーマに絞って参加しました。次回、わたしが参加したセッションを、いくつか紹介します。


余談ですが、会議中はあまり美味しいものに出会うことができませんでした。たとえば、水気の少ないサンドイッチに飽きて、右の写真の「ライスヌードル」を注文したのですが、一見ベトナムのフォーのようなのに、期待と大きく違いました。コンビニで買ったインスタントのカップ麺も二口目が食べられなくて。そして、食べ物や飲み物の値段がとても高くて驚きました。会場だけでなく、オーストラリア全体で高いみたいです。

2014/12/10

シドニー 世界自然公園会議(WPC) ③ どんな会議でいつから?

世界自然公園会議(WPC)のテーマ

The World Parks Congress(世界自然公園会議、略してWPC)の正式名称は、IUCN World Congress on Protected Areas(世界自然保護連合保護地域会議)。自然環境や生物多様性を守る上で重要な仕組みである保護区に関して話し合う国際会議です。

自然を守る上での資金の重要性について話すGEFのトップ、石井菜穂子氏。


IUCNは、1948年に設立された世界最大の自然保護のための国際機関で、国連総会の公式オブザーバーです。国やさまざまな国際機関、NGOなどの1200以上がメンバーになっています。日本にも事務局 (IUCN日本委員会)があり、歌手のイルカさんが親善大使をなさっています。なお、”Parks”は、訳すと「公園」ですが、ここでは、Protected Areasの意味も込めて「自然公園」と訳しています。

ここでの議論は法的な拘束力を持つものではありませんが、今後の世界の取り組みに関する提言や方向性の議論、問題認識の共有、情報収集などが行われ、議論の内容は、関連する条約や国際社会の動向、国の政策、専門家グループの活動などに大きな影響を持ちます。


1962年に始まり、10年ごとに開催

今回のシドニーでの会議は、第6回世界自然公園会議です。世界自然公園会議は、1962年に第1回がアメリカのシアトルで開催されてから、10年ごとに開催されてきました。これまでの会議の開催年は、環境に関する大きな機運があった年と重なります。

第2回は1972年に、世界初の国立公園となったイエローストーンで開催され、自然公園でのエコツーリズムや、国立公園の運営、社会的、科学的、環境的な課題について議論されました。この年は、ストックホルムで国連人間開発会議が開催された年です。また、当時は日本で自然環境や公害対策への関心が多いに高まった時期で、1971年に環境庁が設置されています。

第3回は、1982年にインドネシアのバリ。次の1992年にベネズエラのカラカスで行われた第4回の会議では、2000年までに陸地の10パーセントを保護区にするという目標が立てられました。まこの会議は、ブラジルのリオデジャネイロで世界的に環境への関心を高め、環境に関する重要な3つの国際条約やアジェンダ21が生まれた「地球サミット」の直前に開催されました。

前回から11年目の2003年に南アフリカのダーバンで開催された第5回の会議では、保護地域に関する宣言「ダーバン合意(アコード)と行動計画」、ワークショップからの32の提言、「生物多様性条約へのメッセージ」などがまとめられ、画期的な成果を上げました。

自然環境に関する他の会議との関係

また、保護地域に関する重要な決議が行われたのが2004年のマレーシアでの生物多様性条約第7回締約国会議(CBD-COP7)と2010年の日本でのCBD-COP10です。CBD-COP10で発表された愛知ターゲット11は、陸地の17%、海域の10%を保護することを目標に掲げ、今回のシドニーの会議でも重要なテーマになっていました。



ネルソン・マンデラ氏へのオマージュ

WPCでは、開会式でのネルソン・マンデラ氏へのオマージュに加え、会議の間中、いたるところで、昨年12月にこの世を去った偉大なマンデラ氏への感謝が表されていました。

開会式では、ネルソン・マンデラ氏のビデオが上映されました。


バージン・グループ創始者のリチャード・ブランソン氏は、1周忌に「The world joined together to not only mourn his death, but celebrate his incredible life. (世界中が、マンデラ氏を失ったことを悼むだけでなく、彼の類稀な人生を称えた)」と思いを述べています。

南アフリカのダーバンで開かれた第5回WPCで、マンデラ氏は先住民と地域社会が尊重され保護されるような環境保全の未来像を示しました。自然や生物多様性を守ることは、人としての権利を守ることだと、今も私たちに呼びかけてくれている気がします。






2014/12/08

シドニー 世界自然公園会議(WPC) ② 開会式

開会式が始まる。自然保護のリーダたちが集結。

WPCの会場は、2000年のシドニー・オリンピックの競技会場。十分なスペースがあり、各イベント会場への移動がしやすく配置されていました。いよいよ12日。開会式にぞくぞくと参加者が集まってきました。なかなか入場できなかったので、入り口の前に大きな人だかりができました。今回の参加人数は、6000人近くになる見込みとのことです。

先住民族アボリジニの楽器、ディジリドウの演奏。
息を継がず、循環させて音を出す難しい楽器です。

オーストラリアの先住民族のダンスパフォーマンスで開会式が始まりました。見事なアボリジニの民族音楽ディジリドウの演奏。先住民族は、自然保護の重要なステークホルダーです。

開会式をリードするのは、IUCN事務局長のジュリア(Julia Marton-Lefevre)さんとエルネスト(Ernest Enkerlin Hoeflich)さん。笑顔とユーモアで数カ国後を話しながらのフレンドリーな見事な司会。他の方が話す間もこの開会式中ずっと長時間立ったままでした。

IUCN事務局長のジュリアさんたちの司会。
参加者すべてに参加していると思わせてくれる素晴らしい司会。



IUCN会長ジャン氏は2012年にアジアからの初めて会長に着任。

IUCN会長のジャン氏(Zhang Xinsheng)は、前回のダーバンWPCから、海洋保護区の増加を含め、保護区の面積が2倍に増えたこと、保護区はカーボンを蓄え、洪水や干ばつに対して回復力を増やすなど、気候変動に取り組むために重要な役割を果たすことについて語りました。そして、すべての人に「保護区と、人々と、この地球のために」協力することを呼びかけました。

開催国オーストラリアの環境大臣のご挨拶、国連事務総長バン・キムン氏のビデオメッセージなど、多くの方からのご挨拶が続きました。グレートバリアリーフの中からのメッセージも生中継で届きました。


マンデラ氏へのオマージュと先住民族への敬意

ステージのスクリーンはまるで巨大コンピューターの画面。会議ロゴが映っていたかと思うと、話し手の顔のアップ。次には自然の風景。効果的に使われていました。いまは、看板を作ったり巨大TVモニターを設置したりしなくていいから便利です。

ネルソン・マンデラ氏のメッセージ。教育は自然を守るためにもとても重要。


このスクリーンに次にアップになったのは、11年前のダーバンで強烈なカリスマ性で人々を魅了したマンデラ氏。将来のために自然を守るために教育が重要であることを強調した2003年のスピーチのビデオが流れました。参加者たちはマンデラさんの偉業に敬意を表し大きな拍手。ひ孫のルブヨ・マンデラさんが壇上に登場し、若者の活動の重要性をアピールしました。

また、キリバス、パラオ、クックアイランドからはそれぞれ大統領が参加。気候変動の影響を大きく受けている国の指導者たちは、自然保護の取り組みで世界をリードして行く思いをスピーチしました。まさに前日アメリカと中国が気候変動問題で合意したことを歓迎し、島の人々の伝統的な生きる知恵、自然資源を回復できる範囲でだけ利用する“The Bull”という方法があり、国際社会にもそのやりかたで、自然資源を守るようよびかけるために2004年に立ち上げたミクロネシア・チャレンジを紹介。そして、「自分たちだけではできない」と国際社会の協力を呼びかけました。

南太平洋からシドニーまで航海してきたカヌーが、前日に港に到着!
メンバーが島のダンスを踊ります。

実は、この会議に向けて、南太平洋の島から航海してきた一群が、前日にシドニーハーバーに到着していました。世界最年少で世界一周の航海を成し遂げたジェシカ・ワトソンさんがエルネスト氏と一緒にこれを紹介し、会議の開催を宣言。航海してきたメンバーが登壇。お祝いのダンスが披露され、会場はスタンディングで喝采を送りました。

次は、このWPC(世界自然公園会議)とはそもそもどんなものなのか、について紹介します。



2014/12/01

シドニーで 世界自然公園会議 ”The World Parks Congress”

11月12日から19日まで、オーストラリアのシドニーで「The World Parks Congress(世界自然公園会議)」が開催されました。

「The Promise of Sydney(シドニーの約束)」の発表。


当初見込まれ得ていた5000人を大きく超え、170を超える国から、政府や国際機関の代表、NGOや企業の関係者、さらに国家元首など6000人以上が参加。さまざまな規模や多様な設立主体による世界の“公園”を通して、どのように地球上の自然、わたしたちの命と生活を支えてくれる生物多様性を守ることができるのか。新たな解決法を求めた議論の成果が「The Promise of Sydney」としてまとめられ、次の10年間の行動への方向性を導きだしました。

次回はこの会議について詳しく報告します。


WPCのウェブサイト http://worldparkscongress.org