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2015/03/24

スマトラ島南端のウェイ・カンバス国立公園で考えるエコツーリズム②

バンダールランプン空港から南へ110キロ。ウェイ・カンバス国立公園のゲートで国立公園に入る許可証をもらいます。近くのエコロッジにチェックイン。このロッジで専門のガイドを頼んで、野生の生き物たちを見ることができます。

南国の花や植栽が美しいロッジ
Way Kambas 国立公園入り口

ロッジ近くのトレイルで見られた希少な生き物の記録

この地域には、とても希少なスマトラトラがすんでいます。案内してくださったレンジャーの方もこれまでに数回見かけたことがあるそうです。自然保護団体がカメラトラップ(夜間の動物の行動を赤外線で察知して自動で撮影するカメラ&ビデオ)を使用したり、足跡やフンなどの残された手がかりを収集して、生態を追っています。

カニクイザルやブタオザル、シアマン(フクロテナガザル)などの霊長類に出会う機会もありました。特に川縁ではたくさんのカニクイザルの群れに出会うことができました。

また、スマトラゾウもいます。ゾウを使った観光施設があり、国内や中国からの観光客が訪れているそうです。ゾウについては、地域が抱える問題もあるのですが、別の回に詳しく書きたいと思います。


カニクイザル。でも、カニよりも木の実の方が好きみたい。
ふと近くの木を見上げると、トカゲが。動きが敏捷。
黄色いくちばしが印象的なドラーバード

子犬くらいの小さいマメジカや、ヒヨケザル、シアマンなども、ふとした瞬間に現れます。川縁では、カニクイザル、ブタオザル、そしてサギをはじめたくさんの水鳥たちに出会うことができます。わたしが一番気に入ったのは、重量感のあるドラー・バードです。


緑がきれいなハチクイ(bee-eater)
夕方にはとくにたくさんのサルたちが川べりに現れます。
スマトラサイは大切に飼育されています。
世界的に注目されるサイの保護センター。
リサーチに加え、密猟者の取り締まりが行われています。

スマトラサイは、この地域では野生絶滅してしまい、現在は数頭の保護飼育が行われています。野生の個体が生息しているのは、ジャワ島のウジュンクロンだけになってしまい、極めて深刻な状況にあります。

エコツーリズムとは

エコツーリズムは、その地域の環境にできるだけ負荷をかけないで、自然を楽しむ観光です。希少な動植物をみることができるのが醍醐味ですが、そこに暮らす人々がいれば、生活を垣間見させてもらうのも旅の面白さでしょう。また、その訪問が、見た生き物たちにまつわるストーリーを調べたり、保護の取り組みに付いて学ぶきっかけになるのもよいと思います。

観光客の数が増えると自然への負荷が増えてしまうので、エコツーリズム業界も工夫すべきことが増えそうです。が、裏を返せば、「産業として新たな可能性がある」のではないでしょうか。

2015/03/19

スマトラ島南端のウェイ・カンバス国立公園で考えるエコツーリズム①

スマトラ島南部のウェイ・カンバス国立公園(Way Kambas National Park)。ここには、急激に減少するスマトラ低地林にわずかに残された貴重な森が守られています。

ボートで川をすすむ。両岸にサルや鳥たちが次々に現れる。


さまざまな生き物たちがすむ森


シアマン(フクロテナガザル)が軽快に枝を移動して行きます。

シアマンとも呼ばれるフクロテナガザルを探して朝の散歩。
黒い体毛で、その名の通り、手が長い。高い木の上を大胆に移動して行きます。

シアマンを探して上ばかり見ていると、地上の貴重な生き物を見逃すことも。マメジカというとても小さなシカが小径を横切って行きました。その途端、「あっ!」上空を横切る風呂敷のような影。ヒヨケザルが樹幹を滑空したのです。

ジャカルタから飛行機で1時間もかからないバンダール・ランプン空港から、車で数時間の移動。首都へのアクセスのよさは、自然への脅威ももたらしやすく、この周辺のスマトラの低地森林は、この数十年で急激に減少し、間もなくすべての森がなくなるのではないかと懸念されています。紙製品を作るため、さらにアブラヤシのプランテーションを作るために、次々に森林が伐採されてしまったことが最大の原因といわれています。また、この地域は倒木や枯れた草などが長年かけて積上ってできた泥炭湿地なので、一旦火災が起こると泥炭層が燃え、なかなか消えずに森を焼き続けます。

そんなスマトラ南部に残る、このウェイカンバス国立公園とブキットバリサン・スラタン国立公園は、スマトラの野生生物たちにとっても貴重な生息地で、スマトラトラ、スマトラゾウ、バク、ドール(アカオオカミ)を始め、絶滅が心配される希少な生き物たちがすんでいます。

次回、ウェイカンバス国立公園で出会った生き物たちについてご紹介します。