ところで、スローロリスというサルをご存知でしょうか?ふわふわのぬいぐるみのような小型のサルです。インドからフィリピンにかけての東南アジアに生息しています。
野生のスローロリス。スマトラ島で。©Russ Mittermeier |
このスローロリス、可愛いことが仇になって、いま絶滅の危機に瀕しているのです。しかも、その危機を高めているのは、日本人だと指摘されています。
野生動物虐待ビデオに「いいね!」がつけられる日本
日本の環境団体JWCS(野生生物保全論研究会)と、イギリスのオックスフォードブルックス大学のネカリス博士のグループは、インターネットに公開されているビデオの中で、虐待ともいえる扱いで”かわいがられる”スローロリスのビデオをたくさん見つけました。多くが日本人によるものです。
例えば、夜行性のスローロリスを明るいところにさらしたり、野生では昆虫や樹液を食べるのに、人間が食べるおにぎりを食べさせたり。しかも、スローロリスの生態を知らない人たちは、単純に”かわいいっ!”と思ってしまい、ビデオに「いいね!」をつけたり、拡散したりしてしまっているのです。
さらに、そういう”かわいい”スローロリスのビデオ映像は、見た人たちに「スローロリスをペットとして飼いたい」と思わせてしまうようです。なんと、日本はスローロリスの最大の輸入国。絶滅危惧種のスローロリスは、ワシントン条約で保護されていて、現在は、特別な場合しか輸入が認められていないのに、いまも登録票が不正使用されたりして、ときには100万円もする高値をつけてペットショップで売られています。
野生動物は野生のままに
この「おにぎりスローロリスビデオ」は、世界の霊長類学者の間でも問題にされているそうです。ペットにされたスローロリスたちは、奇形を発生させたり、肥満にさせたり。でも、もともとの野生の姿を知らない飼い主は奇形や肥満だと気づかないのです。
スローロリスが絶滅の危機にあること、日本にやってくるスローロリスはほとんど違法取引によるものだということを、もっと多くの人に知ってほしいと思います。この違法取引が魅力的な生き物をさらに危機に追い込んでしまっているのですから。
JWCSの鈴木事務局長は、国際社会は違法野生生物取引を減らすように協力しています。日本も十分に責任を果たすべきです」と呼びかけています。
- JWCSのウェブサイト http://www.jwcs.org