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2016/02/19

野生の世界はそのままに・・・。可愛すぎるスローロリス

サル年、スタートしましたね!
ところで、スローロリスというサルをご存知でしょうか?ふわふわのぬいぐるみのような小型のサルです。インドからフィリピンにかけての東南アジアに生息しています。

野生のスローロリス。スマトラ島で。©Russ Mittermeier


このスローロリス、可愛いことが仇になって、いま絶滅の危機に瀕しているのです。しかも、その危機を高めているのは、日本人だと指摘されています。

野生動物虐待ビデオに「いいね!」がつけられる日本


日本の環境団体JWCS(野生生物保全論研究会)と、イギリスのオックスフォードブルックス大学のネカリス博士のグループは、インターネットに公開されているビデオの中で、虐待ともいえる扱いで”かわいがられる”スローロリスのビデオをたくさん見つけました。多くが日本人によるものです。

例えば、夜行性のスローロリスを明るいところにさらしたり、野生では昆虫や樹液を食べるのに、人間が食べるおにぎりを食べさせたり。しかも、スローロリスの生態を知らない人たちは、単純に”かわいいっ!”と思ってしまい、ビデオに「いいね!」をつけたり、拡散したりしてしまっているのです。

さらに、そういう”かわいい”スローロリスのビデオ映像は、見た人たちに「スローロリスをペットとして飼いたい」と思わせてしまうようです。なんと、日本はスローロリスの最大の輸入国。絶滅危惧種のスローロリスは、ワシントン条約で保護されていて、現在は、特別な場合しか輸入が認められていないのに、いまも登録票が不正使用されたりして、ときには100万円もする高値をつけてペットショップで売られています。

野生動物は野生のままに


この「おにぎりスローロリスビデオ」は、世界の霊長類学者の間でも問題にされているそうです。ペットにされたスローロリスたちは、奇形を発生させたり、肥満にさせたり。でも、もともとの野生の姿を知らない飼い主は奇形や肥満だと気づかないのです。

スローロリスが絶滅の危機にあること、日本にやってくるスローロリスはほとんど違法取引によるものだということを、もっと多くの人に知ってほしいと思います。この違法取引が魅力的な生き物をさらに危機に追い込んでしまっているのですから。

JWCSの鈴木事務局長は、国際社会は違法野生生物取引を減らすように協力しています。日本も十分に責任を果たすべきです」と呼びかけています。






         




2015/05/17

スイスで自然保護と鉄道の旅

スイスには、多くの国際機関がありますが、環境保護団体のWWFの本部や、国際自然連合IUCNの本部もおかれています。スイスは、永世中立国として知られていますが、大国に囲まれたことを活かして外交に長けた国としても有名です。多くの人がフランス、ドイツ、英語などの数カ国語を流暢に話せます。世界中の人と協力する必要がある自然保護の仕事のためには、主要な言葉を話せると役に立ちます。

ジュネーブからチューリッヒへ向かう車窓からの風景。清々しい空気。


会議と打ち合わせのためにIUCN(現地では、フランス語が使われ、UICNといいます)にお邪魔しました。IUCNは、各国の政府や国際機関、NGOなど1200のメンバーからなる国際機関です。1万人を超える科学者と1000人のスタッフが自然保護のために働いています。スイスの本部は、とても静かでのどかな場所にあります。

淡水生態系保護のセミナーに飛び入り参加。

IUCN本部から近いレマン湖のほとりには、美しい町があり、観光客も多く訪れていますが、それでも、なぜか時間がのんびりと流れている感じがします。

レマン湖にいた珍しいカモ。

あちこちに水飲み場が。直接飲めるそうです。
たいてい花が飾られています。

スイスと言えば、鉄道ファン垂涎の国!美しい山や景色を見ながら移動できて、爽快でした。

レマン湖周辺にはワイン畑が広がっています。
最近スイスワインは人気なんだとか。


鉄道好きには楽しめる場所がたくさん!

地元の方にホームディナーに誘っていただきました。夕方、まだ日があるうちのアペリティフのあと、会議の参加者たちと一緒に近くの自然道で散策を楽しみました。“散策”といっても、生物の専門家ばかり。すごい双眼鏡やカメラを持ち、生き物や樹木を見つけるたびにミニ講義。鳥を見つけては鳥の学者がなんという名前でどんな生態なのかを説明してくれるし、ここにしかいないカメが池にいたと誰かが見つければ、は虫類専門家が走り出して見に行き、ずっと離れないし。いつまでも少年のような大人たちと一緒にいると、心から楽しめます。

ディナーには、いろいろな国から来ているインターンの若い方達も加わって、さまざまな情報交換が行われていました。美味しい家庭料理を作ってくれたホストに感謝。ここでは空気が澄んでいて、星空がとてもきれいでした。部屋での歓談の合間にワインを持って外に出てお庭のベンチに腰掛け、しばし星空見学。





2015/01/25

アラビア紀行① 中東からの自然環境保全は、決定力と資金力!

ここ数年、中東のプレゼンスの高まりを実感します。まずビジネスに関しては、中東パワーは重要な要素。エミレーツ航空やカタール航空などの日本への就航やその運行実績への高評価、日本企業による投資やドバイの高層タワーや高級住宅なども注目され、いままで日本からは遥か遠くに思われていた国々が、急速に身近になってきたようです。 

ドバイの水族館。アラビアの服装の少年たちも。


自然環境保護の多くの場面でも、中東からの資金支援やイニシアチブに触れる機会が断然増えています。わたしが中東に注目した最初のきっかけは、2008年のWCC(World Conservation Congress、世界自然保護会議)でした。バルセロナで開催されたこの会議で、アブダビの皇太子モハメド・ビン・ザイド王子が、アブダビ政府による種の保護のための150億ドルの資金支援を発表したのです。

絶滅危惧種の保護を支援するモハメド・ビン・ザイド財団

この資金の運営のために設立されたモハメド・ビン・ザイド財団は、年々支援の範囲を広げてきました。レッドリストに掲載されている絶滅危惧種の保全が対象です。途上国だけを対象としているほかの多くの基金と異なり、この基金は種を対象にしているので、本当に必要な種の保護のために応募することができます。

日本からも、レッドリストに掲載されているサケ科の魚、イトウの保護プロジェクトが支援を受けています。

国際的な自然保護で著名な理事をメンバーに有し、多くの国での事業をフレキシブルで公平に支援してきたモハメド・ビン・ザイド財団への応募と支援実績は年々増加しています。支援実績のデータベースをオンラインで見られることや、年に数回の応募がオンラインでできることも、応募者にとって便利な要素です。
*財団のウェブサイトはこちら


2015/01/24

シドニーWPC(世界自然公園会議)でのその他の議論

シドニーWPC では、その他にも多くの議論がありました。

違法野生生物取引に関するセッション。写真は押収された象牙。


なかなかブログで書ききれないので、今後ウェブサイトにレポートを載せる予定です。以下のことについて報告したいと思います。アップしたらお知らせします。

  • 野生生物に関する犯罪ー違法狩猟、取引、法の規制と取り締まり
  • KBAとAZE
  • レッドリスト50周年
  • ツーリズムの可能性
  • 素晴らしい自然保護の取り組みの表彰

子どもたちへの環境教育ツールを紹介するブース


2015/01/09

泡瀬干潟の保全が国際的に急務!緊急に必要な地域リスト(IBAs in Danger)に掲載される。 シドニーWPC⑦

自然保護のための取り組みの一つに、重要な地域を選定して、そこでの保全に資金や人材を集中させるアプローチがあります。世界自然遺産の指定も高い効果があると言われています。日本の自然公園には、国立公園(現在31カ所)、国定公園、都道府県立公園があり、また国や知事が定める鳥獣保護区があります。

*リンク:日本の自然公園に関する法令

生態系の上位に位置し、研究と保護が進んでいる鳥は、重要な生態系の指標。

IBAsとは

それぞれの国の取り組みの他に、国際的な枠組みで指定やリストアップされている重点保護地域もあります。IUCN(国際自然保護連合)やそのメンバーであるNGOなどが手がけていて、多くのものは、各国の取り組みと連携しています。

国際的な野鳥保護のネットワーク、バードライフ・インターナショナルは、「国際的に重要な生物多様性と野鳥生息地域(Important Bird and Biodiversity Areas、以下IBAs)」をリストアップしています。バードライフ・インターナショナル・アジアのウェブサイトによると、現在、世界で12,126ヵ所、日本では166ヵ所が登録されています。生物種のなかでも、鳥については、かなり早い時期に保全の取り組みの仕組みづくりとネットワークづくりが行われました。これは、世界中に鳥を愛するたくさんの人々のおかげだと思います。また、鳥は生態系の健全性を示す指標として優れていることから、IBAsは、国際的かつ科学的な指標として信頼され、さらに多くの種を対象とした保全に関する「重要生物多様性保全地域(Key Biodiversity Areas, KBAs)」のベースになっています。


泡瀬干潟の保全が急務!


緊急な保全が必要な世界のIBAsの地図。「日本はないのかな」と思ってみていたら、泡瀬干潟が。
出典:http://www.birdlife.org/datazone/userfiles/file/IBAs/pubs/IBAsInDanger2014.pdf

バードライフ・インターナショナルは、2014年の危機的な状況にあるIBAsのリストを作りました。102カ国から356カ所が、緊急に保全の必要な場所として選ばれたのです。このパンフレットがWPCで配られ、また、KBAsのセッションでもプレゼンテーションが行われました。

危機リストのなかに、日本からただ一カ所、沖縄の泡瀬干潟が入っていました。

240番が泡瀬干潟

泡瀬干潟は、南西諸島でも最大級の規模の干潟で、多くの希少生物が生息していますが、いま、干潟の埋立事業が、環境保全上の争点となっています。泡瀬干潟の保全を訴える「自然の権利」訴訟が行われており、2月24日に判決が出る見込みだそうです。

昨年、沖縄県では翁長新知事が選出されました。日本のなかでもとくに豊かでかつ繊細な生物多様性を有する沖縄での今後の自然保護がどう動くのか。目が離せません。




2015/01/05

自然の保護にはコミュニケーション&ネットワーキングが欠かせない! シドニー 世界自然公園会議(WPC) ⑥

シドニー 世界自然公園会議(WPC) の会議やイベントには、議論や発表、提言などの他に、コミュニケーションとネットワーキングの場がたくさんありました。世界中からさまざまな分野で活躍する人々が一同に集まる貴重な機会は、旧交を温め、新しい情報を得、何かを生み出す絶好の場になるのです。

シドニーハーバーへのクルーズ。ライトアップされたオペラハウスや橋がきれい

シドニーハーバー・ナイトクルーズ

ある夜のIUCN(国際自然保護連合)のクルーズでは、会議場とは違う雰囲気で、ワインを片手に景色を楽しみながら、さまざまな人と語らうことができました。

デイタイムのプログラムの前後にはこのような公式・非公式の交流の場がいくつもありました。会議や分科会が同時進行していて、基本的にオープン参加。そのため、早朝ミーティングやディナー、会期前後の専門会議、"Only By Invitation"の会議などが各分野のトップや外部からのハイレベル参加者が集まる機会となっていたようです。

このクルーズにもそんな気配があちこちに。新しいアイデアやネットワークができるのもこんな機会から。国際的な自然保護の舞台では、政治家や経済分野の要人、オピニオンリーダーなどとの交渉や関係づくりが極めて重要です。自然や科学、社会活動などの専門のほかに、社交術が欠かせません。世界の自然保護に関する知識や人に関する知識、自分の体験や知識を楽しく伝えることができる話術、人の話しを聞く力。立場や状況を正しく判断してプロトコルに従うこと(例えば、他の人が主役のイベントにその人より目立つ着物を着ていくとかはあり得ない)などをわきまえていない人は、いつかいなくなっていきます。

パーティーに行こう!

「日本の会社員は、酒を飲んでやっと本音で話す」と欧米の友人たちはよく批判しますが、なんの。世界のあちこちでそういう場を見てきました。食事会や職場でのハッピーアワー、互いの家庭訪問などを通して本音を探ることは、国籍にこだわらず行われています。(日本人会社員の問題は、わたしも然うの傾向があるのですが、お酒に弱い人が多いことかも)

環境NGOやネットワークによるキャンペーン「Nature Needs Half」のパーティーは、要職の人たちから若者まで会場に溢れるほどの人が集合。呼びかけやメッセージを伝えたり、資料が配られたり。たくさんの飲み物と美味しいつまみ。普段は会うことが難しいレベルの人をつかまえて話しができるのも、ちょっとアルコールが入ってのカジュアルな機会ならではです。ラップ・シンガーが「生物多様性」をテーマにしたラップミュージックを歌い始めると会話は難しくなりましたが。。

マダガスカル大統領のレセプション

マダガスカル大統領が自然保護の取り組みについて語る。
会議場近くのホテルで行われたマダガスカル政府主催のカクテルパーティーでは、マダガスカルの生物多様性を紹介するビデオが上映され、マダガスカル大統領が自然保護への取り組みの意欲を語り、マダガスカルの多様な自然保護に取り組む参加者たちと交流しました。このような場でのコンサベーショニストたちからの働きかけが、生物多様性保全のスケールアップをするというクロージングでの大統領の画期的な発表につながっていったのかもしれません。

マダガスカル生物多様性基金のウェブサイトで、WPCでの大統領の発言のビデオを見ることができます。
madagascarbiodiversityfund.org

余談ですが、このパーティの翌日、ホテルのセキュリティが一気に強化されました。報道陣もたくさん。この会議中で一番たくさんのTVカメラと報道用カメラをみました。「大統領や政府高官がとまってるからかな?でもいきなりこれは変だなー」と思って、マダガスカル人の友人に「ハディ大統領が滞在しているからかな?」と聞くと、「うーん。ウチの大統領がそれくらい重視されてるといいんだけど。」

実は、同じ時期にブリスベンで開催されていたG20に参加していたインドのモディ首相が宿泊したためとあとで判明。モディ首相はシドニーでオーストラリアに住むインド人数千人への演説をしたと、翌日の新聞で大きく報道されていました。


ト―マス・フリードマン(Thomas Friedman)氏、「ブリスベンより重要だ」

この期間中、オーストラリアの新聞はG20に関しての記事ばかり。ほとんどの新聞社は記者をシドニーではなくブリスベンに向かわせたようです。韓国の新聞記者を一人だけ見かけましたが、日本からの取材の人を見かけることはありませんでした。

IUCN関係者によると、今回参加した国際的なジャーナリストは、トム(トーマス)・フリードマン氏だけ。自然保護に関する広報方針は、より戦略的にしていく必要があると痛感しました。自然保護の分野の人々へのアピールだけでは足りません。各国のディシジョンメーカー(決定権をもつ人たち)や一般市民に自然保護を訴えるには、まずその媒介者になりうるジャーナリストたちに、自然を守ることは、私たちの人権や経済や日常生活を守ること、と訴え続けて行かなければ。もちろんジャーナリストたちは知識でそう知っているでしょう。でも実際に現場で活動する人たちとの関係を築き、情報を常にアップデートしていくことで、より多くの情報が市民やディシジョンメーカーに伝わるはずです。

トムはステージで、「ジャーナリストたちはブリスベンだけでなくシドニーに、この大事な議論の場にいるべきだ!」と嘆いていました。この著名なジャーナリストの現場からの声がコラムとしてNYタイムズに掲載されたことは本当によかったです。

NYタイムズのトム・フリードマンの記事


分科会ストリーム5で議論をリードするフリードマン氏。
「SNSのつぶやきは広い銀河に言葉を投げているようなもの。
Facebookでなく本当のfaceに訴えよう!」