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2015/04/14

スマトラ島ウェイ・カンバス国立公園で考えるエコツーリズム③ 不思議なサル、スローロリス

ウェイ・カンバス国立公園の周辺には、スローロリスという不思議な生き物がすんでいます。スローロリスは、樹液や花の蜜や果実を食べる夜行性の小型霊長類です。

スマトラ島南部にすむ野生のスローロリス©Russ Mittermeier


スローロリスを探してナイトウォーク


エコロッジで紹介していただいた専門のガイドの方について、ナイトウォークに出かけました。辺りは国立公園からほど近い小さな農村で、キャッサバなどの畑や、小さな林が点在しています。

スローロリスは木の上にいるので、上を見ながら歩きます。でも。ずっと上を見上げて歩いていたら、首が痛くなってきました。そのとき、「あっ!」と声が。ガイドの方がライトを照らす先、高い木の葉の間に、黒い小さなシルエット。二つの目がライトを反射しています。体長はだいたい30センチくらいでしょうか。背中に黒い帯の模様があります。

スローロリスの背中。黒っぽいラインが特長。©Russ Mittermeier

かれらは、スローロリスというその名に似合わず、動きが素早いようです。あまり長い時間ライトを当てるとかれらの目への負担が大きいので、すぐにライトを外すのですが、ちょっと目を離すと見失ってしまいます。

「こっち!」とガイドさんの声。今度は電線の上を走っています。小さくてふわふわした体つきがまるでぬいぐるみのようです。


スローロリスの危機


実は、その可愛さが問題なのです。スローロリス(この種はスンダロリス)は、インドネシア国内でも、ほかの国でも、ペットとして人気が高く、これまでにたくさんのスローロリスが捕まってしまいました。

スローロリスは夜行性なのですが、ペットのスローロリスは、昼間も人間にかまわれて眠ることができず、すぐに弱って死んでしまうと言います。

IUCNのレッドリストで絶滅危惧種に指定され、ワシントン条約でも保護されましたが、特に2000年以降は数が減る一方でした。レッドリストでもっとも危険度が高い(EN)にリストされ、2007年にはワシントン条約でもより厳格な付属書Ⅰに掲載され、国際取引が禁じられています。

スローロリス(Sunda loris)の生息地

スローロリスの生息地であるスマトラやマレー半島では、
アブラヤシ栽培などのため生息地が急減しています。
http://www.iucnredlist.org/details/summary/39759/0

スローロリスの数は、いまも減り続けています。一番の脅威はペット取引目的の違法狩猟。そして、生息地の破壊。スマトラの低地熱帯林は、猛烈な勢いで減少しています。


スローロリスを守る可能性-「迷信」とエコツーリズム


わたしたちが歩いた村では、たくさんのスローロリスを見ることができました。そんなに人目につきやすいなら、捕まりやすいのではないかとも思われるのですが、この村にはスローロリスを守る「迷信」がありました。

「スローロリスに触ると、家族に災いが起きる」というのです。そのため、彼らはスローロリスを見るだけ。見てカワイイと思うそうですが、決して捕まえようとは思わないそうです。

さらに、彼らは、ガイドが観光客を連れてくることを知っています。エコツアーから地元にベネフィットが落ちれば、観光資源であるスローロリスを守ろうとする動機付けが強くなります。外からやってくる違法なペット業者は、村人に見つかり追い出されるでしょう。

スマトラ南部の名産のひとつはドリアン!
大好きな人と絶対食べられない人にわかれます。。

エコツーリズムとかれらの「迷信」を組み合わせたら、保全のための一つの手段になるかもしれません。調査と保全手法デザインとその普及を組み合わせたプロジェクトを企画し、この近くのほかの地域に広げられないかと考えています。


スローロリスを探して歩いていたら、ヨタカにも出会えました。