Translate

2015/02/23

惜しくもアカデミー賞を逃したVIRUNGA。でも、多くの人に自然保護の現実を知らせてくれるはず。

昨日アカデミー賞の発表がありましたが、残念ながらVIRUNGAはオスカーを逃してしまいました。でも、素晴らしいドキュメンタリー映画であることには変わりません。日本でもぜひ上映してほしいです。多くの人に見て、現場を知ってほしい。

国立公園の森の地下に資源が眠っていることはまれではありません。その資源へ向けられる視線は熱く、とくに政治的に安定していない国や貧困の度合いが高く公平度の低い国では、自然保護に関わる人たちの危険の度合いが高くなります。

わたし自身はそんなに緊迫した状況におかれたことはありません。でも、レンジャーの方たちや実際にいろいろ深刻な自然保護の困難を経験してきた人たちの話しを聞く貴重な機会を得てきました。知ることはすべての第一歩です。そこから何ができるのかを一緒に考えることができるはずです。



2015/02/22

第87回アカデミー賞発表間近!自然保護ドキュメンタリー映画Virungaがオスカー2015にノミネート

今年も世界の映画好きが心ときめかす季節がやってきました。第87回アカデミー賞の発表は、2月22日です。

わたしの大好きなThe Grand Budapest Hotelも作品賞などにノミネートされていて、どうなるかワクワクしながら発表を待っています。

アカデミー賞ドキュメンタリー部門にノミネートされたVirunga
Image from virungamovie.com

ドキュメンタリー部門には、「Virunga」がノミネートされています。



コンゴ東部の世界遺産、ヴィルンガ(Virunga)国立公園は、希少なマウンテンゴリラの生息地です。すべてのマウンテンゴリラの三分の一がここにすみ、また、東ローランドゴリラ(eastern lowland Grauer’s gorillas)やチンパンジーもいます。つまり、ヴィルンガは、三種の大型類人猿がくらす世界で唯一の場所ということ。美しい自然と優美でたくましい生き物。実はこの地球の遺産を守るのは、命がけです。

この映画では、自然保護の重要性と過酷な現実が強烈に描かれています。銃や国連治安維持部隊、戦士。きめ細かく作り込まれた映画のシーンのように見える光景は、現実なのです。

社会問題に目を向け続けてきた若い監督Orlando von Einsiedel と、 映像の力で社会や人権などの問題について社会に問いかけてきた女性プロデューサーJoanna Natasegaraの作品。レオナルド・ディカプリオがエグゼクティブ・プロデューサーとして参加しています。



シドニーWPCの議論にリモートで参加する
ヴィルンガ公園長エマニエル氏。
内戦、密猟者、自然公園の地下に眠る石油と鉱物資源。人の欲望と争いのため、ヴィルンガ国立公園のパークレンジャーは非常な危険にさらされています。この20年間で130人ものレンジャーが密猟者の襲撃によって亡くなっているのです。公園長のエマニエルさん(ベルギー王子)も、二度も狙撃され命の危険にさらされました。

The Telegramの記事:
Battle for Virunga: The fight to save Africa's oldest national park

エマニエル氏や英ウィリアム王子が参加した「United for Wild Life」の記者会見に関するブログ


「Conservation is War (自然保護は戦争だ)」というショッキングな言葉も、映画Virungaをみるとその通りであることが実感できるはず。これは、ヴィルンガ国立公園だけでなく、世界の多くの場所で当てはまる言葉なのです。




Virungaが今回のオスカーにノミネートされたことで、自然保護の現場の直面する深刻な問題、レンジャーたちの偉大な仕事、自然の貴重さと素晴らしさなどを多くの人が知る機会になるのではないかと思います。

WPCではレンジャーたちが表彰されました。




2015/02/16

フロリダ自然保護区を自転車散歩。希少なアナホリゴファーガメたち

アナホリゴファーガメ(Gopher Tortoise)は、その名のとおり、大きく深い穴を掘るカメで、温暖なフロリダを中心にアメリカ南東部に生息しています。

アナホリゴファーガメ。仲間を探しているのかな。

フロリダのとある鳥獣保護区を自転車で散策して、たくさんのアナホリゴファーガメを見つけました。道の両脇にはカメが丈夫な脚で掘った穴があり、ときどきそれらの穴からカメが歩き出してくるのです。

花やフルーツ、草などを食べるこのアナホリゴファーガメは、絶滅の危機にあり、フロリダ州の個体数は80万頭以下に減少しているとみられています。ワシントン条約の付属書Ⅱにも掲載されています。危機の最大の原因は住宅地や商業地の開発に寄る生息地の減少で、交通事故、病気なども影響しています。


毒ヘビもお散歩中。

道の脇の小川のなかには、ワニの子どもがプカプカ。

フロリダの住宅地には、野生の鳥たちがやってきます。


2015/02/08

アラビア紀行② 豊かな海の生態系と希少な生き物を守る取り組み

アラブ首長国連邦には、7つの首長国があります。首都のおかれているアブダビ、ドバイ、シャルジャ、ラス・アル・ハイマ、フジャイラ、アジュマン、ウンム・アル・カイワインの7つの首長国から構成されています。

ドバイ空港からアブダビへ。高速道路の両側には高層ビルが建ち並ぶ。

まず、ドバイの空港から高速道路を通りアブダビへ。真新しい高層ビルが道の両側に建ち並ぶ光景に圧倒されました。お迎えは超高級なトヨタ車。車種は忘れてしまいました。窓の内側には強烈な日差しを遮るシェードが付いているのがなんともご当地流。快適な移動でしたが、車外の気温はなんと摂氏48度。


砂漠の国に豊かな海が

アラブ首長国連邦の国土の大部分は砂漠ですが、沿岸には豊かな海洋生態系が存在します。サンゴ、ウミガメ、イルカ、ジュゴンなどが生息しています。

マングローブの森もあります。アブダビでは、40年ほど前に日本の石油会社の支援でマングローブの植林が行われ、現在は、とても大きな森になっています。ここでは、サギやフラミンゴなどの鳥や、カニなどの小動物を見ることができます。カヌーやフローティングボードで遊ぶ人もやってきます。

マングローブ林は、小動物や鳥たち、そして人々の憩いの場になっている。

違法野生生物取引が増加

貿易や観光で発展するドバイでは、取り扱う物流の量も飛躍的に伸び続けています。ドバイは、アフリカ、アジア、ヨーロッパの貿易中継地として地理的にも優れていますが、空港や港湾での野生生物の違法取引の摘発も増えているそうです。今回は、摘発された後の動物たちを保護しているシャルジャの施設を訪問しました。マダガスカルのリクガメやアフリカのヘビやトカゲ、アラビア半島のさまざまな生き物が狙われています。アブダビの環境庁は、CITES(ワシントン条約)との連携を強化しているそうです。

ペットとして違法に海外に持ち出されそうになったアラビアン・レパード。

カタールの王族が希少な生き物を保護

アラブ首長国連邦に続いて、カタールを訪問しました。野生生物保護に強い関心を持つカタールの王族が保護施設を設立したのです。もともとは王族の個人的なコレクションだった希少な生き物たちは、現在、世界の各国から集められた専門家によって飼育されています。ここは、砂漠の真ん中ですが、地下には豊かな地下水があり、汲み上げられた水は、地上で動物たちを癒す緑を潤しています。

動物飼育保護施設は、砂漠に囲まれている。

下の写真の青いインコ(Spix's macaw)は、もとの生息地である北西ブラジルのカチンガでは、ペット需要のために捕獲されすぎた結果、絶滅してしまったのです。最後の野生の個体が目撃されたのは2000年でした。ところが、ある個人のコレクションとして数羽が生存していることがわかり、この施設にやってきました。この施設は、このインコの野生への復帰を目指して、飼育と繁殖の取り組みを続けており、現在では65羽に増えています。この努力に加えて、カタールの王族は、もとの生息地であるブラジルにインコを戻すために、土地を入手して生息環境回復の取り組みを続けてきました。

ところが、とても残念なことに、昨年秋にこの王族が急逝してしまいました。これまでの取り組みに心から敬意を表します。今後の保全プロジェクトの行方が気がかりです。


ブラジルで野生絶滅したインコ(Spix's macaw)。