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2015/02/08

アラビア紀行② 豊かな海の生態系と希少な生き物を守る取り組み

アラブ首長国連邦には、7つの首長国があります。首都のおかれているアブダビ、ドバイ、シャルジャ、ラス・アル・ハイマ、フジャイラ、アジュマン、ウンム・アル・カイワインの7つの首長国から構成されています。

ドバイ空港からアブダビへ。高速道路の両側には高層ビルが建ち並ぶ。

まず、ドバイの空港から高速道路を通りアブダビへ。真新しい高層ビルが道の両側に建ち並ぶ光景に圧倒されました。お迎えは超高級なトヨタ車。車種は忘れてしまいました。窓の内側には強烈な日差しを遮るシェードが付いているのがなんともご当地流。快適な移動でしたが、車外の気温はなんと摂氏48度。


砂漠の国に豊かな海が

アラブ首長国連邦の国土の大部分は砂漠ですが、沿岸には豊かな海洋生態系が存在します。サンゴ、ウミガメ、イルカ、ジュゴンなどが生息しています。

マングローブの森もあります。アブダビでは、40年ほど前に日本の石油会社の支援でマングローブの植林が行われ、現在は、とても大きな森になっています。ここでは、サギやフラミンゴなどの鳥や、カニなどの小動物を見ることができます。カヌーやフローティングボードで遊ぶ人もやってきます。

マングローブ林は、小動物や鳥たち、そして人々の憩いの場になっている。

違法野生生物取引が増加

貿易や観光で発展するドバイでは、取り扱う物流の量も飛躍的に伸び続けています。ドバイは、アフリカ、アジア、ヨーロッパの貿易中継地として地理的にも優れていますが、空港や港湾での野生生物の違法取引の摘発も増えているそうです。今回は、摘発された後の動物たちを保護しているシャルジャの施設を訪問しました。マダガスカルのリクガメやアフリカのヘビやトカゲ、アラビア半島のさまざまな生き物が狙われています。アブダビの環境庁は、CITES(ワシントン条約)との連携を強化しているそうです。

ペットとして違法に海外に持ち出されそうになったアラビアン・レパード。

カタールの王族が希少な生き物を保護

アラブ首長国連邦に続いて、カタールを訪問しました。野生生物保護に強い関心を持つカタールの王族が保護施設を設立したのです。もともとは王族の個人的なコレクションだった希少な生き物たちは、現在、世界の各国から集められた専門家によって飼育されています。ここは、砂漠の真ん中ですが、地下には豊かな地下水があり、汲み上げられた水は、地上で動物たちを癒す緑を潤しています。

動物飼育保護施設は、砂漠に囲まれている。

下の写真の青いインコ(Spix's macaw)は、もとの生息地である北西ブラジルのカチンガでは、ペット需要のために捕獲されすぎた結果、絶滅してしまったのです。最後の野生の個体が目撃されたのは2000年でした。ところが、ある個人のコレクションとして数羽が生存していることがわかり、この施設にやってきました。この施設は、このインコの野生への復帰を目指して、飼育と繁殖の取り組みを続けており、現在では65羽に増えています。この努力に加えて、カタールの王族は、もとの生息地であるブラジルにインコを戻すために、土地を入手して生息環境回復の取り組みを続けてきました。

ところが、とても残念なことに、昨年秋にこの王族が急逝してしまいました。これまでの取り組みに心から敬意を表します。今後の保全プロジェクトの行方が気がかりです。


ブラジルで野生絶滅したインコ(Spix's macaw)。