シドニーハーバーへのクルーズ。ライトアップされたオペラハウスや橋がきれい |
シドニーハーバー・ナイトクルーズ
ある夜のIUCN(国際自然保護連合)のクルーズでは、会議場とは違う雰囲気で、ワインを片手に景色を楽しみながら、さまざまな人と語らうことができました。デイタイムのプログラムの前後にはこのような公式・非公式の交流の場がいくつもありました。会議や分科会が同時進行していて、基本的にオープン参加。そのため、早朝ミーティングやディナー、会期前後の専門会議、"Only By Invitation"の会議などが各分野のトップや外部からのハイレベル参加者が集まる機会となっていたようです。
このクルーズにもそんな気配があちこちに。新しいアイデアやネットワークができるのもこんな機会から。国際的な自然保護の舞台では、政治家や経済分野の要人、オピニオンリーダーなどとの交渉や関係づくりが極めて重要です。自然や科学、社会活動などの専門のほかに、社交術が欠かせません。世界の自然保護に関する知識や人に関する知識、自分の体験や知識を楽しく伝えることができる話術、人の話しを聞く力。立場や状況を正しく判断してプロトコルに従うこと(例えば、他の人が主役のイベントにその人より目立つ着物を着ていくとかはあり得ない)などをわきまえていない人は、いつかいなくなっていきます。
パーティーに行こう!
「日本の会社員は、酒を飲んでやっと本音で話す」と欧米の友人たちはよく批判しますが、なんの。世界のあちこちでそういう場を見てきました。食事会や職場でのハッピーアワー、互いの家庭訪問などを通して本音を探ることは、国籍にこだわらず行われています。(日本人会社員の問題は、わたしも然うの傾向があるのですが、お酒に弱い人が多いことかも)環境NGOやネットワークによるキャンペーン「Nature Needs Half」のパーティーは、要職の人たちから若者まで会場に溢れるほどの人が集合。呼びかけやメッセージを伝えたり、資料が配られたり。たくさんの飲み物と美味しいつまみ。普段は会うことが難しいレベルの人をつかまえて話しができるのも、ちょっとアルコールが入ってのカジュアルな機会ならではです。ラップ・シンガーが「生物多様性」をテーマにしたラップミュージックを歌い始めると会話は難しくなりましたが。。
マダガスカル大統領のレセプション
マダガスカル大統領が自然保護の取り組みについて語る。 |
マダガスカル生物多様性基金のウェブサイトで、WPCでの大統領の発言のビデオを見ることができます。
madagascarbiodiversityfund.org
余談ですが、このパーティの翌日、ホテルのセキュリティが一気に強化されました。報道陣もたくさん。この会議中で一番たくさんのTVカメラと報道用カメラをみました。「大統領や政府高官がとまってるからかな?でもいきなりこれは変だなー」と思って、マダガスカル人の友人に「ハディ大統領が滞在しているからかな?」と聞くと、「うーん。ウチの大統領がそれくらい重視されてるといいんだけど。」
実は、同じ時期にブリスベンで開催されていたG20に参加していたインドのモディ首相が宿泊したためとあとで判明。モディ首相はシドニーでオーストラリアに住むインド人数千人への演説をしたと、翌日の新聞で大きく報道されていました。
ト―マス・フリードマン(Thomas Friedman)氏、「ブリスベンより重要だ」
この期間中、オーストラリアの新聞はG20に関しての記事ばかり。ほとんどの新聞社は記者をシドニーではなくブリスベンに向かわせたようです。韓国の新聞記者を一人だけ見かけましたが、日本からの取材の人を見かけることはありませんでした。IUCN関係者によると、今回参加した国際的なジャーナリストは、トム(トーマス)・フリードマン氏だけ。自然保護に関する広報方針は、より戦略的にしていく必要があると痛感しました。自然保護の分野の人々へのアピールだけでは足りません。各国のディシジョンメーカー(決定権をもつ人たち)や一般市民に自然保護を訴えるには、まずその媒介者になりうるジャーナリストたちに、自然を守ることは、私たちの人権や経済や日常生活を守ること、と訴え続けて行かなければ。もちろんジャーナリストたちは知識でそう知っているでしょう。でも実際に現場で活動する人たちとの関係を築き、情報を常にアップデートしていくことで、より多くの情報が市民やディシジョンメーカーに伝わるはずです。
トムはステージで、「ジャーナリストたちはブリスベンだけでなくシドニーに、この大事な議論の場にいるべきだ!」と嘆いていました。この著名なジャーナリストの現場からの声がコラムとしてNYタイムズに掲載されたことは本当によかったです。
NYタイムズのトム・フリードマンの記事
分科会ストリーム5で議論をリードするフリードマン氏。 「SNSのつぶやきは広い銀河に言葉を投げているようなもの。 Facebookでなく本当のfaceに訴えよう!」 |