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2014/12/22

シドニー 世界自然公園会議(WPC) ⑤ 保護区に関する議論

Parks, People, Plant

World Parks Congress(WPC)のParksとは、自然保護区を意味しています。保護区を設けることは、希少な生き物や自然の恵みを守るために、最も効果的な方法の一つとされていて、生物多様性条約の愛知ターゲットでも、2020年までに陸地の17パーセント、海域の10パーセントを保護区にすることを目標にしています。


Parks(自然保護区)に関するパネルディスカッション。

分科会に先立ち行われた3つの小全体会議のうち、保護区(Parks)の全体会議では、ロンドン動物学会のジョナサン・ベリー氏がモデレーター。保護区の維持には、トラッキングや衛星情報の活用など高い費用が課題になっていることを説明しました。基調講演で、生態系保護協会(Society for Conservation Society)のジェームズ・ワトソン氏、続くパネルディスカッションでは、さまざまな国立公園の経験が紹介され、自然を回復させるために、地域の住民の協力が不可欠であることなどが強調されました。

Peopleでは、若者を啓発し人間関係を築いていくことの重要性、都市計画において保護区考察・対応を芯におく必要性などが語られました。Planetのセッションでは、NASAの17の衛星が気温や海面、降雨などの環境条件をモニターしていることや、社会経済的価値を生み出す森と川と海の連関を表す「Satoyama(里山)」の考え方に基づいた「グリーン復興」の一環として三陸復興国立公園の設立が進められていることなどが紹介されました。


Ocean is Our Life and Future

今回、海と若者が特に注目を集めていました。海洋生物学者のシルビア・アールさんは、ダーバンでは十分海洋に関する議論がなされなかったことや、まだまだ保護区の面積が10パーセントという目的に達していないこと、また、公海での海洋保護区の重要性を指摘し、「次の10年がこれからの1万年のうちで最も重要」であると訴えました。

スピーカーの紹介。左端がシルビア・アールさん。


また、既述しましたが、開会式には太平洋のいくつかの島から大統領が参加。パラオはEEZ(排他的経済水域)すべてを海洋保護区にし、すべての商業漁業を止めることをアナウンスしました。またキリバス大統領は、EEZの11パーセントを占める同国海洋保護区で、来年1月から商業漁業を禁止することを説明。環境NGOのTNCやCI、米国政府などとの国際的な協力によって、2004年に立ち上げたミクロネシアの挑戦(Micronesia Challenge)、2006年のフェニックス諸島海洋保護区、2009年の太平洋海洋国家イニシアチブ、さらに今後も海洋保護区の規模と保護が拡大されていくことを話しました。

複数の会議がいろいろな場所で進行して行くのですが、International Institute for Sustainable Developmentが配布している瓦版(Bulletin)で、どんな議論や発表がほかで行われていたのかを知ることができました。この瓦版はオンラインで見ることができます。

12日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num10e.pdf
13日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num11e.pdf
14日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num12e.pdf
15日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num13e.pdf
17日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num14e.pdf
18日 http://www.iisd.ca/download/pdf/sd/crsvol89num15e.pdf


いくつかのスピーチからのメモ

  • 「自然」を開発や産業のコアにおくこと。消費パターンの変更
  • 先住民族の人たちにもっと働く場を設ける必要性
  • 自然保護と開発が相容れない場合にも、対決でなく、対話すべき
  • 大企業が「よいビジネス」を行うためには何が必要か。
  • 自然資本の考え方
  • グッド・ガバナンス、強いリーダーシップ、情報が重要
  • 保護区によって、SDG(国連の持続可能な目標)達成への貢献

自然ツーリズム

バードウォッチングは成功しているツーリズムの一例。
すでに大きな観光産業になっています。
ツーリズム(観光産業)には保護区での環境保全を強化できる可能性があります。自然ツーリズム(Nature Base Tourism)を民間資本で主導し環境整備に投資すること、公共と民間のパートナーシップを作り上げること、利益をコミュニティへもたらすことなどが重要だと指摘がありました。また、コスタリカやルワンダなどで、自然ツーリズムが成功し、水源地の保全やコミュニティの収入向上に貢献していることが紹介されました。